フィッチ、米国債を格下げ、2011年の再来か?

著者:菊川 弘之
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 格付け会社フィッチは1日、米国の外貨建て長期債務格付けを最上位の「トリプルA」から1段階低い「ダブルAプラス」に引き下げた。

 フィッチは格下げについて、今後3年間で予想される米政府の債務負担増見通し(財政悪化)に加え、債務上限の引き上げを巡る「度重なる政治の膠着と土壇場での解決が示す(米国の)ガバナンスの低下」を反映したと説明した。

 債務上限問題で米政権と野党が対立した2011年、両者の合意から3日後に大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(現S&Pグローバル)が米国の格付けを最上位から「ダブルAプラス」へ1段階引き下げ、世界的な株安が進行・NY金は大きく買われ、当時の史上最高値を更新(2011年9月高値)した。

 今回も債務上限問題自体は、6月に2025年1月まで上限を停止することで最終決着したが、2024年11月の米大統領選を経て誕生する新政権は再び同様の問題に直面する。イエレン財務長官やホワイトハウスは、直ちに反論の声明を出したが、フィッチは5月下旬、上限引き上げを巡る混乱を受け、米国の格付け見通しを「ネガティブ」とし、状況次第で格下げの用意があると警告していた。

 足元のマーケットは日米欧の金融政策の差からくる金利差に焦点が当たっていたが、8月のBRICS首脳会議を前に、米覇権・基軸通貨ドルの揺らぎと言う大きなテーマが意識され始めてくる可能性には注意。

 米経済のソフトランディングなどと言う楽観論に、冷や水が浴びせられた格好だ。ドル円が本当に大きく動くのは、米国要因に材料がある時だ。

米国債格下げ時のNY金

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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