[Vol.1595] 有事沈静化後も別の材料が下支えする

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。85.19ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,996.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年01月限は14,460元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年12月限は670.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1083ドル(前日比5.40ドル縮小)、円建てで5,240円(前日比0円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月27日 18時37分時点 6番限)
9,583円/g
白金 4,343円/g
ゴム 253.3円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「有事沈静化後も別の材料が下支えする」
前回は、「長期視点では『中央銀行』に注目」として、金(ゴールド)市場を取り巻く7つのテーマを確認しました。

今回は、「有事沈静化後も別の材料が下支えする」として、中央銀行が考える金(ゴールド)の保有比率(現在15%)の動向について、確認します。

前回述べたとおり、異なる意図を持ち、外貨準備高を管理したり、その中にある金(ゴールド)を保有したりしている先進国と新興国の中央銀行ですが、当該調査では今後の方針を問う質問もなされました。

5年後、米ドル、金(ゴールド)の保有比率がどの程度になると思うかについて質問がなされました。米ドル(現在の保有比率51%)については、先進国、新興国ともに、多くがドルの保有比率は低下すると回答しました(先進国と新興国合わせて55%が低下するとした。昨年は42%だった)。

先進国の中央銀行の半分弱(46%)、新興国の中央銀行の半分強(51%)が、5年後、ドルの保有比率が低下すると考えています。抜粋されたコメントの要旨は以下です。

・グローバルな舞台で他国の重要性が増す中、対米投資は現在より若干減少するだろう。
・過去数十年、準備通貨を多様化させ、米ドルへの依存度を下げることが主流だった。
・米ドルは依然として基軸通貨として支配的である。

「金(ゴールド)(現在の保有比率15%)」については次のとおりです。先進国、新興国ともに、多くが金(ゴールド)の保有比率は上昇すると回答しました(先進国と新興国合わせて62%が上昇するとした。昨年は46%だった)。

先進国の中央銀行の4割弱(38%)、新興国の中央銀行の6割強(64%)が、5年後、金(ゴールド)の保有比率が上昇すると考えています。抜粋されたコメントの要旨は以下です。

・現在のリスクシナリオは、金(ゴールド)のような比較的安定した資産の増加を示唆する。
・金(ゴールド)は歴史的に、不確実性の高い時期に比較的安定した資産と見なされてきた。
・中期的には金(ゴールド)の準備高は若干減少すると見ている。

先述のとおり、「中央銀行」は、金(ゴールド)市場を取り巻く7つのテーマの1つです。時間軸は「中長期」です。WGCの調査結果は、金(ゴールド)市場に、少なくとも5年という長期視点の、「中央銀行」起因の上昇圧力がかかることを示唆していると、筆者は考えています。

西側・非西側の分断が長期化すれば、中央銀行の金(ゴールド)保有は数十年単位で旺盛な状態が続く可能性すらあると、筆者は考えています(仮に有事が沈静化しても、別の長期視点のテーマが価格を下支えする可能性がある)。

有事をきっかけに金(ゴールド)に関心を寄せられた方も、そうでない方もぜひ、金(ゴールド)の長期的なテーマにご注目ください。金(ゴールド)相場が壮大なスケールの上で成り立っていることを実感いただけると、思います。

図:5年後、中央銀行の金(ゴールド)の保有比率(現在15%)はどうなると思いますか?
図:5年後、中央銀行の金(ゴールド)の保有比率(現在15%)はどうなると思いますか?

出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。