ドローン事件でサウジの原油在庫は20%減少か?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油(WTI先物)反落。ドルインデックスの反発などで。53.98ドル/バレル近辺で推移。

金反発。主要株価指数の下落などで。1,492.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年01月限は11,860元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。19年12月限は442.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで597.45ドル(前日比5.25ドル拡大)、円建てで2,060円(前日比1円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(10月23日 12時45分頃 先限)
 5,173円/g 白金 3,113円/g 原油 37,160円/kl
ゴム 168.9円/kg とうもろこし 23,990円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「ドローン事件でサウジの原油在庫は20%減少か?」

前回は「JODIがサウジの8月の原油在庫のデータを更新」として、JODI(共同機構データイニシアティブ)が公表した、サウジの8月の原油在庫のデータを確認しました。

今回はドローン事件でこのサウジの原油在庫がどれだけ減少したのかを推定します。

原油生産量のデータは海外通信社2社、EIA(米エネルギー省)、OPEC(石油輸出国機構)、IEA(国際エネルギー機関)の5つの機関のデータを参照します。

以下の資料のように、サウジの9月の原油生産量の5つの機関の平均は、前月比11.4%減となる日量869万5,000バレルでした。

事件の影響で、一時は生産量が半減と言われましたが、実際のところ、5機関の平均で見ても、9月は8月に比べて10%前後の減少にとどまったとみられます。

生産量の回復が早かった、そもそも半減していなかった、などの理由が考えられます。

一方、原油在庫については、JODIのサウジの原油在庫データ(8月時点で1億7,275万3,000バレル)をもとに推定すると、9月は5機関平均で19%の減少(8月比)となったとみられます。

仮に、事件が起きなかった場合の9月の生産量を8月と同じ量とし、事件が起きた9月の生産量との差分(減少分)を計算すると、5機関平均では、980.9万バレル/日量 × 30日間(原油生産量の総量は2億9,430万バレル) - 869.5万バレル/日量×30日間(原油生産量の総量は2億6,080万バレル)→ 3,342万バレルという値が出ます。

サウジが、この生産量(総量)の減少分を原油在庫の取り崩しで対応したとすると、8月時点で1億7,275万3,000バレルあった原油在庫が、9月には1億3,933万3,000バレルまで減少(8月比19.3%減少)した可能性があります。

先月の事件がサウジの原油在庫に及ぼした影響は、小さくなかったと言えます。

図:サウジの原油生産量および原油在庫へのドローン事件の影響について(筆者推計)
サウジの原油生産量および原油在庫へのドローン事件の影響について

出所:海外主要メディア、EIA、OPEC、IEA、JODIのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。