[Vol.1609] 有事ムードは見えないリスクに昇華

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反落などで。72.98ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,989.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年01月限は14,200元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年01月限は566.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1091.3ドル(前日比6.80ドル拡大)、円建てで5,321円(前日比3円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月17日 16時34分時点 6番限)
9,603円/g
白金 4,282円/g
ゴム 265.8円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「有事ムードは見えないリスクに昇華」
前回は、「プラチナの将来性」として、プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移を確認しました。

今回は、「有事ムードは見えないリスクに昇華」として、世界(西側・非西側)の分断深化が与える金(ゴールド)相場への影響を確認します。

金(ゴールド)に長期視点の投資妙味はないのでしょうか。筆者は金(ゴールド)にも投資妙味があると、考えています。短中期のテーマの一つ「有事ムード」が超長期視点の「見えないリスク」に昇華(さらに高度な状態へ飛躍すること)しつつあると考えるためです。

足元、イスラエルとハマスの戦争も、ウクライナ戦争も、「有事ムード」を強め、資金の逃避先と目される金(ゴールド)を物色する動機となり、相場に短中期的な上昇圧力をかけています(別途文脈起因の下落圧力が強まった時、これらの上昇圧力は相殺され、相場は下落することがある)。

ただ、足元の諸情勢を見てみると、これらの戦争が、全く別の地域にマイナスの影響を及ぼしていることが分かります。先月、国連(国際連合)の安保理(安全保障理事会)と総会では、戦争を停止するための決定打を示すことができませんでした。常任理事国のいずれかが反対したためです。ウクライナ戦争勃発以降続いている「国連の機能不全」は続いたままです。

西側と非西側の間で分断が深まっている中での決議は、「どちらに属しているかを公表する」機会になっているといえます。決議のたびに、西側・非西側のリーダー格の国々の顔色をうかがう国が現れ(スタンスを示したくない国が投票を棄権する場合もあり)、世界が一つになることが困難になってしまっています。

こうした傾向はウクライナ戦争勃発以降、続いています。国連の機能不全は、戦争を止めさせる第三者が不在であることと、ほぼ同義です。

各国の世論に目を向けると、パレスチナ人を支持するかユダヤ人を支持するかで、二分されている国・地域があります。

中東からの移民が多い欧州では、国のトップはユダヤ寄り、一部の市民はパレスチナ寄り、米国では歴史的背景を踏襲して年配の人がユダヤ寄り、戦争に反対する若者がパレスチナ寄り、などという具合です。特に米国では、来年の米大統領選にも影響を及ぼし得る話です。

また、戦争が続いていることでエネルギーや食料の価格が高止まりし、インフレ(物価高)が世界各地で国の財政や人々の生活をむしばんでいます。インフレ対策と称し、各国政府は国民に莫大(ばくだい)な額の補助金を付与しています。

また、米国の主要都市の一部で治安の悪化が深刻化しているとの報道がありますが(サンフランシスコの繁華街など)、リモートワークが進んで街が空洞化したことのほか、インフレも治安悪化の原因であると考えられます。

国連の機能不全、欧米での国内世論分断、長期化するインフレによる社会問題急増…。こうした西側・非西側の分断起因の事象は束になり、超長期視点のリスクを膨張させていると考えられます。

こうしたリスクは戦争のような目に見える分かりやすいリスクではないため、「見えないリスク」であると考えます。今まさに、激化の一途をたどる「有事ムード」は、超長期視点で金(ゴールド)相場を支え得る「見えないリスク」に昇華しつつあると、言えるでしょう。

超長期視点で、金(ゴールド)は有望な投資対象であり続けるでしょう(米国の利上げなど別文脈の短中期的な下落圧力に要注意)。

図:世界(西側・非西側)の分断深化が与える金(ゴールド)相場への影響
図:世界(西側・非西側)の分断深化が与える金(ゴールド)相場への影響

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。