[Vol.1983] 米国債の「逃避先」としての地位が低下

著者:吉田 哲
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原油反発。中東・ウクライナ情勢の一部悪化などで。62.82ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。3,383.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年09月限は13,450元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年07月限は462.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2329.2ドル(前日比4.80ドル縮小)、円建てで10,897円(前日比38円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月3日 18時09分時点 6番限)
15,541円/g
白金 4,644円/g
ゴム 284.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物 日足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「米国債の『逃避先』としての地位が低下」
前回は、「うなぎ上りのS&P500指数」として、S&P500指数のショック発生時の下落率・回復までの年数などを確認しました。

今回は、「米国債の『逃避先』としての地位が低下」として、S&P500指数のショック発生から回復までに要した期間における、NY金先物と米国債の騰落率を確認します。

前回述べた、2010年ごろ以降にショックの影響が小さくなった背景には、リーマンショック(2008年)後に欧米の中央銀行が大規模な金融緩和を実施したことや、その後も幅広い市場で金融緩和を期待するムードが強まったこと、そして世界中でさまざまな金融商品が開発され、リスクを回避・分散する策が増え始めたことなどがあると考えられます。

こうした変化が生じた2010年ごろ以降、以下のとおり、S&P500指数においてショックが発生してから回復までに要した期間における、NY金先物と米国債価格の騰落率に変化が生じました。

株価急落時、市場関係者は「資金の逃避先」を探します。2010年ごろ以降、その資金の逃避先と目されるNY金先物、米国債ともに、ショック時の上昇率は低下しはじめました。特に米国債を選ぶ動きは、NY金先物を選ぶ動きに対して弱くなっています。

こうした流れを考慮すると、伝統的な投資戦略とされる株式と債券の比率「60:40」は、現代版に改める必要があります。債券の比率を下げ、相対的に選ばれやすくなっている金(ゴールド)やゴールドを含むコモディティ(国際商品)を、資金の逃避先の一つとして、認識する必要があります。

前回述べた「金(ゴールド)を保有する場合、運用資産の何%くらいがよいでしょうか?」という質問への回答は、今のところ「10%くらい」と、考えています。株式と債券、金(ゴールド)の比率は、「60:30:10」となろうと考えております。

図:S&P500指数のショック発生から回復までに要した期間における、NY金先物と米国債の騰落率
図:S&P500指数のショック発生から回復までに要した期間における、NY金先物と米国債の騰落率
出所:Investing.comのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。