週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比3.09ドル安の73.00ドル、ブレント原油は2.90ドル安の77.52ドルとなった。

 前週末の海外原油はポジション調整の買い戻しが継続して続伸。11月の米ミシガン大学消費者信頼感指数が60.4まで低下したことから米景気後退懸念が強まったものの、直近の下落を受けてサウジやロシアの自主減産が来年も継続されることが意識され堅調推移となった。

 先週は週前半は戻りを試す動きも米経済指標がインフレ率の鈍化、消費の弱含み、雇用環境の悪化を示唆したことから下抜け懸念が高まる展開となった。週明け13日はOPECが来年の需要見通しを上方修正したことから続伸。OPECが発表した月報によると来年の需要見通しは従来の1億431万Bから1億436万Bに増加予想となった。翌14日はWTIで80ドルを伺う展開も失速し小幅安。10月の米消費者物価指数が総合で横ばい、コア指数は0.2%上昇と予想を下回り金融引き締め懸念が後退してドル安、米株高となる中、前日のOPEC月報に続きIEAの月報でも2023年、2024年とも世界石油需要を上方修正したことから続伸。ただ、その後は引け後に発表されるAPI統計で先週に引き続き原油在庫が急増するとの思惑から手仕舞い売りが加速した。15日は米原油在庫の増加を嫌気して下落。米EIA統計で原油在庫は+359万Bと8月以来の水準まで増加、米原油生産量は日量1320万Bと統計開始以来の最高水準を記録した。16日は来年の世界的な景気悪化見通しが相場を圧迫し大幅続落。米新規失業保険申請件数は23.1万件と予想を上回る増加、失業保険の継続受給者数は186.5万件と2年ぶりの高水準を記録した。また、FRBが発表した10月鉱工業生産指数が前月比0.6%低下とこちらも予想を下回ったことから原油の需要低迷観測につながり4カ月ぶり安値を更新した。

NY原油チャート

 今週の原油相場はチャート悪化でWTIで70ドル、ブレントで75ドルの節目割れも視野に。今週発表された米消費者物価指数、米小売売上高、米新規失業保険申請件数ともに予想より弱気な内容で景気減速懸念が優勢となり、現状の原油独自のファンダメンタルズが無視されている。WTIは20日に納会を控えており、買い方の投げが出つくさないと反転は難しそうだ。ただ、26日にはOPECプラスの合同閣僚委員会が予定されており、サウジ、ロシア以外からも減産の声が出てきそうだ。また、IEAの月報によると世界石油需要は上方修正され2023年は前年比日量240万B増加、2024年は日量93万B増加の1億293万Bと過去最高となる見込みだ。目先はチャート的に売られやすい環境だが今月27日は満月でもあり反転の転機になる可能性も想定される。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。