[Vol.1973] 産油国の方針は「増産」と「減産」どちら?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。ドル指数の反落などで。62.19ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米主要株価指数の反発などで。3,232.84ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年09月限は14,940元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年07月限は465.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2219.84ドル(前日比7.76ドル縮小)、円建てで10,500円(前日比33円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月20日 17時30分時点 6番限)
15,066円/g
白金 4,566円/g
ゴム 321.4円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,097円/mmBtu(25年7月限 3月21日17時47分時点)

●NY原油先物 日足  単位:ドル/バレル

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「産油国の方針は『増産』と『減産』」どちら?
前回は、「原油相場、上下の圧力に挟まれて下げ渋る」として、原油相場を取り巻く環境(4月2週目以降)を確認しました。

今回は、「産油国の方針は『増産』と『減産』」どちら?として、自主減産実施8カ国の原油生産量を確認します。

原油相場が短期視点で下落した背景に「OPECプラスの増産」が挙げられると報じられています。OPECプラスとは、OPEC(石油輸出国機構)に加盟する12カ国と、非加盟の11カ国の合計23カ国で構成される産油国のグループです。

原油市場への影響力の大きさの目安になり得る「原油生産シェア」は、23カ国合計でおよそ58%です(2025年4月時点)。

OPECプラスの現状を把握し、今後を展望するために欠かせないテーマが「減産」です。この場合の減産とは、人為的な生産削減です。自ら生産量を削減し、世界全体の需給バランスを引き締める行為です。

現在、OPECプラスは二通りの減産を同時に行っています。協調減産と自主減産です。協調減産は、協力宣言の枠組みに入っている19カ国で行っています。各国それぞれに、生産量の上限が設定されています。

上限を超えて生産をした場合、減産非順守となり、埋め合わせの条項に基づき、後に、上回って生産をしてしまった分の生産量を、削減する義務が生じます。

こうした協調減産の枠組みは、2017年1月に始まり、現在も続いています(2022年4月を除く)。OPECプラスは、世界情勢や原油市場の動向などを考慮しながら、生産量の上限を上げたり下げたりしています。

今のところ、2026年12月に終了する予定ですが、延長を繰り返しながら現在に至ったことを考えると、同月以降も協調減産が続く可能性があります。

自主減産は2023年の5月に始まりました。サウジアラビア(以下、サウジ)やロシアなど8カ国で実施しており(協調減産とは別。追加の減産とも言われている)、2026年半ばに終了する予定です。

以下のグラフは自主減産を実施している8カ国の原油生産量(合計)の推移です。緑色の三角で示したとおり、自主減産を開始した2023年5月以降、減少し始めました。そして、2025年4月から自主減産の縮小が始まったため、徐々に生産量が増え始めています。

自主減産の縮小は、生産量が増えることを意味するため、「増産」と報じられるケースが多いです。たしかにそのとおりではあるものの、需給を引き締める行為である「減産」の逆の意味の「増産」とは、やや異なります。

OPECプラスは、協調減産と自主減産を同時進行させています。自主減産を実施している8カ国においては、自主減産を縮小することで生産量は増加しますが、協調減産で設定されている上限(グラフ内の赤線)を超えて生産をすることはありません。つまり、需給が大きく緩むことは想定されていないのです。

図:自主減産実施8カ国の原油生産量 単位:万バレル/日量

出所:ライスタッド・エナジー、JODIのデータおよびOPECの資料を基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。