週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比2.74ドル高の74.49ドル、ブレント原油は3.21ドル高の80.02ドルとなった。

 前週末の海外原油は NY連銀総裁がすぐに利下げを開始するような議論はしていないと、利下げ開始観測をけん制したことからドル安一服したことが重しとなり軟調な推移となった。

 先週は航行リスクの高まりから供給の混乱が警戒されたことが支えとなると堅調な推移が続いた。週明けはイエメン武装組織フーシ派が紅海で商船への攻撃を繰り返していることから、スエズ運河の運航を取りやめる動きが広がっており、供給の混乱が警戒されたことが支えとなった。翌19日は米当局がフーシ派による紅海周辺での商船への攻撃に対処するため、護衛活動を行う有志連合を結成したと発表した一方、フーシ派はそれに対抗する形でイスラエル関連の標的への攻撃を継続する姿勢を表明したことから供給の混乱が続くとの見通しが強まり堅調な推移となった。翌20日は米国がイエメンへの攻撃を検討していると伝わったことから紅海周辺の情勢悪化が懸念され上昇した。一方でAPI統計に続きEIA統計でも原油在庫の増加が示されたほか、米原油生産が過去最高水準に達していると伝わったことが重しとなり上げ幅を縮小する展開となった。週末にかけてはアフリカの産油国・アンゴラがOPECを脱退すると発表したことが嫌気され軟調な推移となった。アンゴラの産油量は日量110万B程度の小規模なことから供給に与える影響は限定的とみられるものの、OPECの結束の緩みが表面化し、価格統制能力への不透明感が高まったことが嫌気された模様だ。

原油チャート

 今週の原油相場はやや下押しされる展開が想定されそうか。イエメン武装組織フーシ派が紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返している中で、米国が報復としてイエメンへの攻撃を検討していると伝わるなど紅海を巡る情勢が悪化していることは引き続き支えとなりそうだ。一方で米国の原油生産量が過去最高水準まで増加しているほか、アンゴラがOPECから脱退すると表明し、OPECの結束が弱まっているとみられることは重しとなりそうだ。今回の脱退で産油国の足並みが乱れ、来年から実施される自主減産の拡大がきちんと履行されるかどうかにも不透明感が強まっており、ブレント原油で70ドル半ばまでは下落する可能性も見ておきたい。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。