週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比2.05ドル高の76.18ドル、ブレント原油は2.43ドル高の81.50ドルとなった。

 前週末の海外原油は予想以上に堅調だった米雇用統計が圧迫要因となり続落。1月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比35.3万人増と市場予想(18万人増)を大幅に上回った。これを受けFRBの利下げ観測が後退し、ドル高に振れたことで売り圧力が高まった。

 先週は中東情勢の懸念や堅調な米経済指標を受けて景気後退懸念が後退したことから上値を追う展開となった。週明け5日は4営業日ぶり反発。ヨルダンで米兵3人が殺害された報復として、シリアとイラクで親イラン武装組織の拠点への空爆を開始、さらにロシア南部最大の製油所ではウクライナ軍のドローン攻撃があり地政学的リスクが高まった。翌6日は続伸。EIAが2024年の米原油生産見通しを日量1310万Bと従来予想の1321万Bから下方修正した。また、ブリンケン米国務長官が中東各国を訪問しイスラエルとハマスの戦闘休止合意の成立に向けて協議するが早期妥結は困難との見方が強く、堅調な動きとなった。7日は米石油製品在庫の減少を受け続伸。EIAの在庫統計でガソリンが-314.6万B、留出油は-322.1万B、石油製品需要が日量2022.7万Bと石油需要の堅調さを示す内容となり下値を切り上げた。加えてイスラエルのネタニエフ首相が完全勝利が近いとして停戦案を拒否したことも買い材料視された。翌8日は中東情勢の不透明感から4日続伸。イラクでは米軍がヒズボラに対する攻撃を実施し司令官を殺害し、米国とイランの対立が拡大する懸念が高まった。また、中国が春節の大型連休入りすることから一時的に石油需要が上振れすることも買い戻しを誘った。

原油チャート

 今週の原油相場は戻り高値を試す展開、引き続き中東情勢が焦点となる。5日にブレント原油は76.62ドルまで押したものの、その後は4日続伸となり200日移動平均の81.70ドルレベルを試す流れとなっている。イスラエルのネタニエフ首相がハマスの停戦案を明確に拒否したことで中東情勢が再び混とんとしている。原油の供給に混乱が生じるものでは無いため、単独材料としては上値は限定的とみるが、米国とイランの対立がエスカレートするか否かは注意深く見守りたい。外部要因的にはNYダウは38000ドル台と過去最高値圏で推移、米国の経済指標も堅調なものが多く、3月の米金利利下げ見通しは大きく後退したが、米国の石油需要後退の兆しは見られない。目先はブレント原油で80~85ドルにレンジアップを予想、買い場探しの相場感で臨みたい。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。