[Vol.1673] まるで「脱ウクライナ危機」

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。76.08ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。2,044.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年05月限は13,750元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年04月限は593.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1142.75ドル(前日比2.95ドル拡大)、円建てで5,507円(前日比2円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月26日 17時03分時点 6番限)
9,839円/g
白金 4,332円/g
ゴム 300.9円/kg
とうもろこし 36,900円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「まるで『脱ウクライナ危機』」
前回は、「新しい発想が求められる現代の市場分析」として、1990年以降の世界全体の民主主義と市場環境の変遷(筆者イメージ)について述べました。

今回は、「まるで『脱ウクライナ危機』」として、ウクライナ関連のロシアを非難する国連総会決議(危機勃発直後および2023年)について述べます。

賛成票が減る可能性があるため決議案の提出を断念した・・・との趣旨の報道があったのは、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって2年になるのに合わせて開催された国連総会直後です。2月23日に開催されたこの総会ではロシアを非難する決議案は提出されませんでした。

以下の図のとおり、侵攻から1年が経過した2023年2月、ウクライナが提出したロシアを非難する決議案は193の加盟国中141カ国(73%)の賛成で採択されました。ですが、同年5月の決議では賛成は87カ国(45%)に減り、12月の決議では78カ国(40%)に減りました。こうした賛成票の減少傾向を憂慮し、2年目となった今年の総会では決議案の提出が見送られました(ウクライナ側の判断だったと報じられている)。

賛成票が減少したのは、「欠席」と「棄権」という明確な姿勢を示さない票が増加したためです。2023年12月の決議の際、世界の52%(棄権41%+欠席11%)がロシアを明確に非難しなかったことは、大変大きな事態です。棄権票だけで賛成票(40%)を上回る決議は、そもそもその決議案への関心度が低いか、多くの国が賛成も反対もできない理由を抱えているか、いずれかでしょう。世界では「脱ウクライナ危機」(くれぐれも脱ウクライナではない)が進んでいるように見えます。

図:ウクライナ関連のロシアを非難する国連総会決議(危機勃発直後および2023年)
図:ウクライナ関連のロシアを非難する国連総会決議(危機勃発直後および2023年)

出所:UN Watch Databaseのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。