[Vol.1672] 新しい発想が求められる現代の市場分析

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。78.16ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,040.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年05月限は13,740元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年04月限は601.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1146.05ドル(前日比2.15ドル拡大)、円建てで5,496円(前日比74円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月22日 15時09分時点 6番限)
9,807円/g
白金 4,311円/g
ゴム 304.0円/kg
とうもろこし 37,020円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「新しい発想が求められる現代の市場分析」
前回は、「海外・国内要因でサンドされた日本株」として、近年の日経平均を取り巻く環境(筆者イメージ)について述べました。

今回は、「新しい発想が求められる現代の市場分析」として、1990年以降の世界全体の民主主義と市場環境の変遷(筆者イメージ)について述べます。

西側諸国は、環境問題をきっかけに石油を否定して電気自動車を普及させ、石油を生産している非西側諸国から自国に利益を移転させたり、人権問題をきっかけに違反がある非西側諸国で作られた綿製品を買わないことを呼びかけて当該非西側諸国を政治的に追い込んだりしました。

こうした2010年ごろから西側諸国が推進しはじめた「正しいことをしているというアピール」は、今ではすっかり投資資金を集めるための行為に変貌し、正しさをアピールする西側の国・企業は莫大(ばくだい)な資金を獲得し、関連する株価は軒並み上昇しています。

しかし同時に、西側の正しさアピールは非西側との分断を深めました。そしてこれらの結果、米国株上昇と世界的なリスク拡大が同時進行することとなりました。

ある著名アナリストは、米国株の長期視点の動向について筆者と議論をしていた時、「米国株が下がったら、世界が大混乱に陥る(おちいる)じゃないですか、だから下がりようがないでしょう?」と述べました。

つまりこのアナリストは、「米国株は世界中の投資家が望まない状態にはならない」と言っているのです。言い換えれば、「米国株市場は世界中の投資家の望みがかなう場である」となるでしょう。

筆者の専門であるコモディティ(国際商品)の市場は、売り手と買い手の関係が比較的平等です。生産者(産油国や鉱山会社や農家など)の多くは価格上昇を望み、消費者(主に資源を持たない国々)は価格下落を望むためです。正反対の望みを持つ者たちがせめぎ合って価格が決まる世界に上昇至上主義は存在しません。

「経済の血液」といわれる原油の市場はまさに、正反対の望みを持つ者たちのせめぎ合いの場です。しばしば需給以外の要因で短期的な上下は起きるものの、価格推移が一方的になりにくいという意味で「現実」的だといえるでしょう。

原油相場(≒現実)と、2010年ごろ以降、非西側を否定することをいとわない正義アピールで上昇しはじめ、下がるとみんなが困るとされる米国株の推移を確認すると、1984年1月に比べ、原油の足元の水準は2.4倍です。一方、米国株はなんと30倍です。

先ほどのアナリストの発言を耳にしてしばらくして、筆者の頭の中をよぎったのは、もはや米国株市場は「市場」ではなく「偶像(神や仏のような崇拝の対象)」と化しているのではないか、ということでした。

もし本当に「偶像」化しているのであれば、米国株市場は大多数の市場関係者の願いに応えようと「上がるのは当たり前」「下がるに下がれなくなっている」「下がることを許されなくなっている」のかもしれません。

その意味では、米国株式市場は、どこまでも上昇する可能性があるといえます。つまりそれは、海外に強く影響を受けている日経平均にも上昇圧力がかかり続ける可能性がある、4万円が通過点になる可能性もある、ということです。

先ほど、西側の「正しさアピール」が、西側諸国の株価上昇と、非西側との分断を深めて世界全体のリスクを高めたと述べました。全体的に見れば、株価上昇とリスク拡大は同時進行しているのです。

リスクがあっても上昇し得るのが、現代の株式市場なのだといえます。そう考えることによって初めて、民主主義が行き詰まったり、リスクが拡大したりしている中で、株価が30倍にもなった値動きを説明するための糸口が見えてきます。

以下の通り、民主主義の変遷とともに市場環境は劇的な変化を遂げてきました。民主主義の流れが始まった1990年ごろの市場環境は、自分のみ(国内のみ)にとどまる、経済学に長けたエリートが現実主義に基づいて導く単純な世界でした。

しかし、民主主義が行き詰まりを見せて分断が深まり、社会が複雑化し始めた2010年ごろから、一般市民も参加する、他人(海外)が強く関わり社会学で網羅的に観察しなければならない、複雑化した偶像が出現し得る世界に変化しました。

日経平均をはじめとしたさまざまな市場を取り巻く環境は、1990年前後(日本のバブル絶頂期)と今とで根本的に違っているといえるでしょう。

今の日経平均は国内に不安材料があっても海外が強ければ上昇し得る(すき間拡大)、その海外は偶像化してどこまでも上昇する可能性すらあるという現在の考え方の前では、1990年前後の国内中心の常識は力不足だと言わざるを得ません。今後の日経平均の動向を追いたいのであれば、過去の常識を捨てて海外を見る。大変に重要なことだと筆者は思います。

図:1990年以降の世界全体の民主主義と市場環境の変遷(筆者イメージ)
図:1990年以降の世界全体の民主主義と市場環境の変遷(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。