[Vol.1681] 中央銀行は分断に金(ゴールド)で対応

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。78.50ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,164.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年05月限は13,725元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年04月限は613.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1244.3ドル(前日比0.50ドル拡大)、円建てで5,914円(前日比58円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月7日 18時36分時点 6番限)
10,258円/g
白金 4,344円/g
ゴム 300.2円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「中央銀行は分断に金(ゴールド)で対応」
前回は、「アップルは脱炭素が分断の一因だと察知?」として、リーマンショックを起点とした世界的なリスク拡大と金、原油、株高の背景(筆者イメージ)について述べました。

今回は、「中央銀行は分断に金(ゴールド)で対応」として、中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移について述べます。

2010年ごろに発生した分断は、各国の中央銀行の外貨準備高の内訳を変化させたと考えられます。外貨準備高とは、中央銀行が対外的な非常事態に備えて蓄えている資金です。

ワールド・ゴールド・カウンシルのデータによれば、2010年代の後半より、中央銀行が保有する外貨準備高に占める金(ゴールド)の割合(世界全体)が上昇しています。一時的に2013年に低下したのは、米国の金融政策が引き締め方向に修正されることが示唆されたことを受け、米ドルを保有する妙味が増したことが主な要因と考えられます。

しかし低下が一巡すると、再び上昇に転じました。西側と非西側の分断深化がもたらす懸念(有事ムード)は、個人のみならず中央銀行にとっても、金(ゴールド)の保有量を積み増す大きな動機になっていると考えられます。

実際に、中央銀行全体の金(ゴールド)の買い越し(購入-売却)状況を確認すると、以下の通り、2010年ごろ以降、買い越しが続いていることが分かります。買い越しの規模は、2022年が統計市場最高、翌2023年がそれに次ぐ高水準でした。

2010年ごろから強まっている西側と非西側の分断をきっかけとした懸念が買いを続ける動機となり、戦争勃発が買いに拍車をかけたと言えそうです。

西側・非西側の分断が解消するまでは、中央銀行の金(ゴールド)の買い越しは続く可能性があると筆者はみています。分断を解消するためには、分断のきっかけとなった「環境問題」と「人権問題」において、西側と非西側が歩み寄ることが必要です。

ですが、西側はすでに、環境問題や人権問題を改善するための策を止めることができなくなっています。なぜなら、すでに莫大なお金を動かしてしまったからです。関連企業の株価や関連金融商品の価格を下落させないためにも、西側は脱炭素を引っ込めることは容易でありません。

つまり分断を解消することは大変に難しいのです(その意味で、アップルのEV撤退は英断だった)。分断がもたらす不安やリスクは長期化し、それをきっかけとした中央銀行の金(ゴールド)の買い越しも長期化する可能性があります。

図:中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移 単位:トン
図:中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移 単位:トン

出所:World Gold Councilのデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。