週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比0.7ドル高の79.91ドル、ブレント原油は0.6ドル高の84.49ドルとなった。

 前週末の海外原油はイラクが次回のOPECプラス会合において減産幅の拡大には同意しないと表明したことが重しとなったほか、複数のFRB高官が利下げに慎重な姿勢を示したことが重しとなり軟調な推移となった。

 先週はドライブシーズンを控える中で需要の増加期待が高まっていることは支えとなった一方、米利下げ開始見通しへの不透明感が重しとなる中で強弱まちまちな展開となった。週明けは米自動車協会(AAA)が今月末のメモリアルデーを含む連休中の自動車による旅行者数が2000年の調査開始以来最高水準になるとの見通しを示したことでガソリン需要の増加期待が高まったことが支えとなった。また、カナダで山火事が発生し、供給に支障が出る可能性があるとの思惑も支援材料となった。翌14日は米生産者物価指数が市場予想を上回る内容となったことから利下げ期待が後退すると、景気鈍化による石油需要の減少が警戒され軟調な推移となった。一方でOPECプラス月報において楽観的な需要見通しが維持されたことは支援材料となった。翌15日は米消費者物価指数(CPI)が鈍化し、年内の利下げ観測が再燃したことから金融市場全体がリスクオンムードとなったことに支えられた。また、EIA統計において原油在庫が予想を上回る減少幅となったほか、製油所稼働率が上昇し、夏場に向けた製品需要の需要拡大期待が高まったことも好感された。週末にかけても製油所への原油投入量の増加から需要の拡大期待が高まっていることが支えとなったほか、米新規失業保険申請件数が今年の最高水準まで増加し、米利下げ観測が高まったことも支援材料となった。


出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 米国CPI発表が無難な数値に落ち着いた事から過度なドル高からの原油急落リスクはなくなり、半面ドル安から円建て原油価格は下落した。依然アメリカのインフレも落ち着いたわけでもなく日銀が急にタカ派に転じるわけでもないため円高に推移する可能性は低そうだ。

 原油は6月OPEC総会前で各国代表の気ままなコメントで上下するだろうが85ドルを挟んで2ドル程度のレンジで推移しそうだ。これからアメリカはドライブシーズンに入るため下値は堅そうだが昨年と異なり製品在庫が積み上がりはじめ、原油とのクラック差が低いことが懸念材料ではある。製品需要が盛り上がらないと圧迫材料になりそうだ。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。