[Vol.1738] 「人の行く裏に道あり花の山」は実現できる

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。79.12ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,357.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は15,350元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年07月限は611.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1311.05ドル(前日比5.15ドル縮小)、円建てで6,675円(前日比11円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月31日 16時31分時点 6番限)
11,858円/g
白金 5,183円/g
ゴム 342.4円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『人の行く裏に道あり花の山』は実現できる」
前回は、「経済学者やアナリストはアイドルなのか!?」として、S&P500種指数と原油相場の推移について述べました。

今回は、「『人の行く裏に道あり花の山』は実現できる」として、「2024年」の金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(筆者イメージ)について述べます。

ここまでの数回の内容を基に得られる、個人投資家の皆さまが金(ゴールド)などのコモディティ(株式ではない)への投資を行う際のヒントは三つあります。(一)過去の常識をそのまま今にあてはめないこと、(二)材料を点で見ないこと、(三)アイドルや芸能人のような民意を体現しようとする経済学者やアナリストを探さないようにすること、です。これらを肯定的な言い方に換えると、(一´)今をしっかりと見つめること、(二´)複数のテーマを満遍なく見ること、(三´)自分と対話すること、となります。

(一)と(二)については、以下の資料が参考になります。金(ゴールド)投資を行う上では、短中期は三つ、中長期は三つ、超長期的は一つ(円建て金(ゴールド)の場合はこれらに一つ追加)のテーマを満遍なく見なければなりません。(絶えず細かい上下はあるものの、短中期的には上昇圧力が勝り、価格は上昇すると筆者は考えています。中長期、超長期も同様です)。

「人の行く裏に道あり花の山」という相場格言があります。多くの人が通る道を避けて、裏の道を進むことで、花の山に行き着くことができる、つまり、民意という群集心理に惑わされず、人とは違う方法を選択することが利益を上げるために重要だ、という意味です。

多くの個人投資家はまだ民意の体現者と近い距離で取引をしている可能性があります。こうした中で、民意の体現者と距離を置くことができれば、心理的に民意の体現者と近い投資家の優位に立てると思います。そうすることで、民意の体現者に近い投資家よりも一歩先に買い、一歩先に売ることができ、花の山に行き着く(投資のパフォーマンスを向上させる)ことができるでしょう。そのためのアクションが、(三´)自分と対話することです。(一´)今をしっかりと見つめること、(二´)複数のテーマを満遍なく見ることと併せて実行すれば、さらに効果が大きくなります。

自分と対話することは、一人でディベート(異なる立場で議論すること)をすることと同じ意味です。仮に金(ゴールド)相場が上昇すると思った時、なぜそう思うのか? その材料の時間軸は短期・中期・長期・超長期のどれか? 逆に下落する材料にはどのようなものが挙げられるのか? など、自分を問い詰めてみると良いでしょう。こうすることで、現状への理解が格段に深まります(ここで初めて、たくさんの情報が必要になる)。

こうすることにより、思い込みの域を抜け出すこと(覚悟を決めること)ができます。大事な資金を投じて行う投資活動には、こうした作業は欠かせません。こうした作業を繰り返すうち、やがて民意の濁流(だくりゅう)から抜け出し、人が行かない道を見つけ、やがて花の山にたどり着くことができるでしょう。

また一人ディベートの別の効果として、自分を相対化できるようになること、が挙げられます。SNSで他人が気になったり、複雑な世の中で生きているうちに自分を見失いそうになったりすることは、誰しもあると思います。一人ディベートはこうしたことへの対策にもなります。

一人ディベートを続けていくといずれ、もう一人の自分に出会います。これは自分を相対化できた状態です。この状態に到達するころにはきっと、誰かのせい、何かのせいにしながら生きていた自分を懐かしく思っていることでしょう。誰か・何かに影響を受けない自分の人生を生きることは、幸せへの第一歩です。そうした状態に近づくためにも、自分を相対化することが必要なのです。ビジネス書や自己啓発書に書かれている「自分の軸を持つ」ことと同じ意味です。

投資活動において一人ディベートを続けることによって、投資技術が向上するだけでなく、幸せな人生への第一歩を踏み出すことができると、筆者は考えています。投資活動を単なるお金もうけにしなくて済むという意味でも、一人ディベートは実践してみる価値があるのではないでしょうか。

図:「2024年」の金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(筆者イメージ)


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。