イランで大規模油田が発見されたことについて

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。57.03ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1,452.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年01月限は12,080元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。19年12月限は457.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで576ドル(前日比0.5ドル縮小)、円建てで2,010円(前日比16円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(11月12日 17時45分頃 先限)
 5,091円/g 白金 3,081円/g 原油 38,910円/kl
ゴム 179.8円/kg とうもろこし 23,280円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「イランで大規模油田が発見されたことについて」

今回は「イランで大規模油田が発見されたことについて」として、今週に入り報道されている、イランの大規模油田の発見について書きます。

イランのロウハニ大統領は10日(日)、新しい油田が見つかり、その埋蔵量が530億バレルとしました。

これについて、翌11日(月)にザンギャネ石油相が会見し、埋蔵量については発見済分が310億バレル、新たに見つかった分が220億バレル、合計で530億バレルとしました。

OPECの統計によれば、イランの原油確認埋蔵量は2018年時点で1556億バレルです。新たに見つかった220億バレルを上乗せすると、1776億バレルになります。

以下は石油確認埋蔵量(上位5カ国)の推移を示しています。OPECの統計はオイルサンドを含んでいないため、報道で目立つBPの統計で上位に入ったカナダはランクインしていません。

イランの新規油田の規模に関する点としては、以下の点があげられます。

1.発見された油田はイランで2番目の規模
2.生産の上乗せ分と報じられている“22億バレル”は、推定で日量20万バレルの生産を30年間継続できる規模
3.日量20万バレルは、現在のイランの原油生産量を10%弱、増加させる規模

また、留意すべき点は以下のとおりです。

1.商用利用できるかまだ不明。存在が推定されれも商用化できない場合がある。
2.免除国であるものの、イランは減産を実施しているOPECプラスの一員。減産実施国に配慮して、直ちに増産することは困難か。
3.現在、イランは米国の制裁下で輸出が困難な状況。イラン産原油の買い手が制裁を受ける。
4.油田が発見されたイラン南部「フゼスタン州」はペルシャ湾内(クウェートとの国境付近)にあり、ホルムズ海峡封鎖時の安定供給源にならない。

イラン特有の要因も加わり、今回の新規油田の発見が、直ちにイランの原油生産量を増加させるきっかけにはならないと考えます。

図:原油埋蔵量上位5位(オイルサンドを除く) 単位:10億バレル
原油埋蔵量上位5位(オイルサンドを除く)

出所:OPECの資料をもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。