週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比0.5ドル安の83.20ドル、ブレント原油は1.24ドル安の85.89ドルとなった。

 前週末の海外原油は反落。イスラエルの情報機関であるモサドのバルネア長官が5日にカタールを訪れたことが報じられ、イスラム組織ハマスとの停戦協議が進展するとの期待が相場を押し上げた。

 先週はイスラエルとハマスの停戦期待から売りが先行したものの、EIA統計での在庫減少が支援要因となり往って来いの展開となった。週明け8日は続落。引き続きイスラエルとハマスの停戦期待が重しとなったほか、ハリケーン「ベリル」が米石油生産の中心地であるテキサス州に上陸したものの、石油関連施設の被害が限定的であることも圧迫要因となった。9日は続落。ハリケーンの影響が一部にとどまり、今のところ供給に大きな混乱が生じていないことから売りが優勢となった。また、パウエルFRB議長が議会証言で利下げ時期が近い可能性を示唆したが、景気減速による石油需要の減少懸念も重しとなった模様。10日は反発。EIA統計で原油、ガソリン在庫が減少したことが相場を押し上げた。弱含んでいた製油所稼働率は95.4%まで上昇しており、今年の最高水準に並んでいる。一方で、テキサス州の石油・ガス関連施設が9日にほぼ操業を再開したと伝わったことは上値を抑える要因となった模様。11日は続伸。米6月CPIが前月比、前年同月比ともに伸びが鈍化し、9月利下げ観測が強まったことが相場を押し上げた。一方でドル安進行から、一時157円半ばまで円高が進む場面もみられた。

NY原油チャート
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 今週の原油相場は引き続き底堅い推移を想定する。今週の米CPIが予想を下回ったことでドル安が進んだことから、引き続き利下げ期待が原油相場を下支えするだろう。また、EIA統計でも原油在庫の減少が続いており、需給の引き締まりがみられることも支援要因となっている。ただ、イスラエルとハマスが停戦協議を続けており、合意に達するならヒズボラは活動を停止するとしていることから、停戦期待は上値を抑える要因となりえる。テクニカル的にもWTIで85ドルを達成できなかったことで上値が重くなることも想定され、ガザ停戦協議に進展がなければ80~85ドルのレンジとなるか。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。