週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比3.04ドル高の76.19ドル、ブレント原油は2.9ドル高の80.28ドルとなった。

 前週末、ジャクソンホールでの、パウエルFRB議長の講演は「政策を調整する時が来た」と利下げを示唆する内容となり、株高・ドル安が進行。イスラエルがレバノン南部のヒズボラ拠点を攻撃したことから地政学リスクが意識されたこともあり、海外原油は値を戻す動きで週を終えた。

 先週は、米利下げ予想から景気のソフトランディング期待、停滞するガザ地区停戦協議による中東リスク、リビア国内の政治的対立による供給不安で、8/12に付けた78.54ドルも視野に入った。米中の石油需要先細り懸念に加え、OPECプラスによる増産への警戒感から戻り売り圧力に押し込まれたが、75ドルを維持して引けている。

 週明け26日は、リビアの国内政治対立が深まる中、東部政府が原油生産の停止を発表。日量100万bbl規模の減産となる可能性があり支援要因。また、イスラエルがレバノン南部のヒズボラ拠点を攻撃したことも地政学リスクを刺激して続伸となった。しかし27日は反落。米ゴールドマンサックスがOPECプラスによる増産への警戒感が高まっているとし、原油予想価格を引き下げたことを嫌気。28日のEIA統計においては、米原油在庫が引続き減少となったが、事前予想を下回る減少幅となり需要期の終盤が意識され続落の動きとなった。29日、米GDP改定値が個人消費の上方修正で予想を上回る内容となり、米経済のソフトランディング期待が高まったことを好感。リビアの政治的対立による生産停止、複数の港で輸出も停止していることは引続き支えとなり値を戻している。

NY原油チャートみんかぶ
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 リビアでの政治的な対立による供給減少は、ロイターの試算では今のところ日量70万bblといわれているが、100万bblに達する可能性があり、規模と期間が注目される。また、OPECプラスの協調減産枠を超過していたイラクが9月以降、生産量を日量385万~390万bblに削減する計画があると言われており、産油国での動きがサポート要因となりそう。一方、8月末、9月2日に中国ではPMI、週後半にかけては米国で雇用関連の経済指標の発表が控えている。景気回復遅れが確認されるようだと需要減少懸念が上値圧迫要因となる。70ドル台で方向感を探る展開が継続すると思われる。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。