実は始まっていた!?サウジの“駆け込み増産”

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。57.99ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの上昇などで。1,464.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年01月限は12,100元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。19年12月限は455.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで573.8ドル(前日比0.2ドル縮小)、円建てで1,994円(前日比6円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(11月18日 16時43分頃 先限)
 5,114円/g 白金 3,120円/g 原油 39,380円/kl
ゴム 183.9円/kg とうもろこし(まだ約定なし)

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「実は始まっていた!?サウジの“駆け込み増産”」

今回は「実は始まっていた!?サウジの“駆け込み増産”」として、OPECのリーダー格であるサウジの原油生産量について書きます。

“駆け込み増産”とは、筆者の造語で、減産を開始、あるいは削減幅や実施国などのルールを変更して減産を延長する場合、開始・延長開始をする数カ月前から、減産の基準となる生産量を引き上げるために一時的に増産をすることです。

多くの場合、減産開始後に“駆け込み増産”を開始する直前までの水準に生産量を戻す(減らす)だけで、減産順守が可能です。

サウジの原油生産量について、今月のOPEC月報で明らかになったのは、OPEC以外の外部の組織が公表したをもとにして作成されたデータである2次情報源(secondary sources)ベースではなく、自己申告(direct communication)ベースで、“駆け込み増産”と思しき、生産量の急増が確認されたことでした。

2019年9月に発生したサウジドローン事件によって、同国の原油生産量は大きく減少しましたが、その後、V字回復しました。

V字回復の折、回復以上にみられた生産増加分が“駆け込み増産”にあたります。事件後の生産回復を口実に増産をしたわけです。

また、自己申告ベースで大幅増加したということは、増加をアピールする意図があったと考えられます。

2次情報源ベースで大幅増加にならなかったのは、減産期間中にサウジの原油生産量が急増すれば、市場のムードを悪化させかねないという、市場への情報源による忖度があった可能性があります。

サウジが“駆け込み増産”を実施していることをアピールする理由は、駆け込み増産を行うことは、後に、ルールを変更した上で減産を延長することを示唆するため、と考えられます。

図:サウジの原油生産量(自己申告ベースおよび2次情報源ベース)
単位:千バレル/日量
サウジの原油生産量(自己申告ベースおよび2次情報源ベース)

出所:OPECのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。