[Vol.1813] 三つの中期拮抗材料、一つの短期下落材料

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。68.85ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,598.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年01月限は17,715元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年11月限は515.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1616.9ドル(前日比7.30ドル拡大)、円建てで7,306円(前日比11円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月18日 18時53分時点 6番限)
11,749円/g
白金 4,443円/g
ゴム 374.1円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,940円/mmBtu(24年12月限 9月18日16時33分時点)

●NY原油先物(期近) 月足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 月足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「三つの中期拮抗材料、一つの短期下落材料」
前回は、「原油相場はウクライナ戦争勃発前の水準に」として、NY原油先物(日足 終値)を確認しました。

今回は、「三つの中期拮抗材料、一つの短期下落材料」として、足元の原油市場を取り巻く環境(2024年9月)を確認します。

前回の図のとおり、ウクライナ危機勃発直前から足元まで、65ドル前後~95ドル前後(瞬間的な高値は除く)の間で推移してきました。それを支えてきたのが、以下の「中期的に拮抗(きっこう)」と記した三つの材料です。産油国からの供給減少懸念がもたらす二つの上昇圧力と中国の悲観論がもたらす下落圧力です。

二つの上昇圧力とは、OPECプラス(石油輸出国機構12カ国に10カ国の非加盟国を加えた22の産油国)の原油の減産をきっかけとした人為的な供給減少懸念と、産油国での戦争をきっかけとした供給減少懸念です。

OPECプラスの減産については、自主減産については縮小開始時期を延期し、協調減産を2025年12月まで継続することを決定したりしています。

産油国での戦争はウクライナとロシアの間で起きている戦争と、イスラエルとイランが支援する複数のイスラム武装勢力の間で起きている戦争です。これらはいずれも、供給減少懸念を増大させ、原油相場に上昇圧力をかけている要因です。

一方で、中国の悲観論については、足元の主要経済指標が弱含んでいるほか、中期視点で、大手不動産企業の不正問題、地方の債務増加、沿岸部の若者の失業率の上昇などのいくつもの問題を抱え続けていることがきっかけで発生しています。これは、原油の需要大国である中国の景気減速懸念を強め、原油相場に下落圧力をかけている要因です。

ウクライナ危機勃発直前から足元まで、レンジ相場が続いた背景については、以下のとおりであると、考えています。この事とは別に、短期的な下落要因があります。

米国の景気悲観論です。雇用統計などの複数の経済指標が弱気の要素を含んでいたこと、米国の原油在庫が予想に反して増加したことなど、短期視点の米国の景気動向に対する悲観論が浮上したことにより、強まっていると考えられます。

図:足元の原油市場を取り巻く環境(2024年9月)
図:足元の原油市場を取り巻く環境(2024年9月)
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。