週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比3.95ドル安の67.85ドル、ブレント原油は3.01ドル安の71.80ドルとなった。

 前週末の海外原油は米利下げを好感した買いが一服し、戻りを売られたことから小反落する格好となった。

 先週はイスラエルがレバノンのイスラム武装組織ヒズボラへの攻撃を強めていることから地政学リスクが意識されたほか、中国が大規模な景気刺激策を発表したことは好感された一方、週末にかけてサウジアラビアがシェア回復のため12月から増産を開始するとの報が伝わると大きく値を落とす展開となった。週明けはユーロ圏PMIが軟調な内容となったことから欧州の景気悪化懸念が強まったほか、対ユーロでのドル高進行が重しとなり軟調な推移となった。翌24日は中国が金利の引き下げや不動産支援など、大規模な金融緩和政策を打ち出したことが好感され堅調な推移となった。一方で米国で発生していたハリケーン「ヘレン」が東にそれ、石油関連施設が集中するメキシコ湾岸などへの被害が軽微なものに留まると伝わったことは重し。翌25日は戻り売りの動きから反落すると、ハリケーンがそれたことやドル高進行したことが重しとなり軟調な推移となった。また、東西で対立していたリビア政府が中銀総裁人事の手順や時期などで合意し、リビア産原油の供給懸念が後退したことも嫌気された。週末にかけてはサウジがシェア回復のため現行の減産体制を11月末で停止し、12月から生産量を増やす準備をしていると報じられたことから需給の緩和が警戒され軟調な推移となった。

NY原油チャートみんかぶ
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 今週の原油相場は上値重い推移が想定されそうか。リビアの供給懸念や米ハリケーンへの警戒感が後退したほか、サウジが市場シェアを重視する方針を示し、12月からは現行の予定通り自主減産を縮小して増産に転じると報じられたことから需給緩和見通しが強まっており、大きく値を崩す展開となった。中国が大規模な景気刺激策を発表したものの、効果は限定的との声も聞かれる中で需要の回復期待が高まる展開とはなっていない。中東情勢は引き続き支えとなりそうな一方、地政学リスクの常態化で原油市場は反応しづらくなっており、イランとの交戦やホルムズ海峡の閉鎖危機など実際に供給懸念が浮上するような問題が起こらない限り、相場を持ち上げる展開とはなりづらそうか。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。