内外共に史上最高値更新中(金相場)

著者:菊川 弘之
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 円建て金の上値目標は、一目均衡表からは、E=14178円、V=14266円などが計算可能だ。過去の米利下げ局面(1998年以降の米利下げ局面の平均)を検証すると、米利下げから3ヶ月後・半年後・1年後の期間で、いずれも円建て金はNYダウやドル建て金よりも大きく上昇している。

 米国はイスラエルに停戦を求めながら兵器を送り続け、国際刑事裁判所(ICC)がプーチン大統領に逮捕状を出すと「正当だ」と歓迎するも、ICCがネタニヤフ首相の逮捕状を請求すると「言語道断だ」と非難するダブルスタンダードが、グローバルサウスと呼ばれる新興国や途上国からの信用を大きく落としている。

 米大統領選挙を控え、社会の分断・2極化が深刻化する米国崩壊を描いた映画「CIVIL WAR アメリカ最後の日」の中で、「What kind of American are you?(どういうアメリカ人だ?)」との詰問や、「ガソリンスタンドで米ドル支払いは断られ、カナダドルならOK」と言う場面も、米国の分断・ドルの先行きを暗示しているものだ。かつて、「自由と民主主義」の旗手であった米国は、世界の警察官の立場を自ら放棄し、内向き姿勢から覇権国・基軸通貨国の地位は、大きく揺らいでいる。

 11月の米大統領選挙では、拮抗した2つの民主主義(左派・右派)が激突し、双方がすんなり「敗北宣言」を出さず、再集計や、各州都での12月の選挙人投票、2025年1月の議会での確定が大荒れする可能性も高い。

 2024年上半期の中央銀行による金の純購入量は、2023年上半期の記録を上回り、過去最高を更新した。中東の地政学リスクの高まりや、米大統領選挙の不透明感などからG7以外各国中央銀行の買いは、続きそうだ。

 場以外共に「買えない相場は高い」を地で行く展開だ。安易な値頃感は持たず、資産の何割かは値段に関係なく、金(現物)を保有する戦略を継続したい。

米国の利下げ開始後のパフォーマンス

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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