[Vol.1929] 金属、エネ、農産物生産国の民主度低下

著者:吉田 哲
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原油反発。ウクライナ情勢の緊迫化などで。67.89ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米主要株価指数の反落などで。2,951.84ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年05月限は17,075元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年04月限は523.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1970.09ドル(前日比19.09ドル拡大)、円建てで9,487円(前日比6円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月13日 17時01分時点 6番限)
14,040円/g
白金 4,553円/g
ゴム 335.6円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,119円/mmBtu(25年5月限 2月28日18時23分時点)

●NY原油先物 月足  単位:ドル/バレル
NY原油先物 月足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「金属、エネ、農産物生産国の民主度低下」
前回は、「世界分裂は資源国の『出し渋り』の動機」として、2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景を確認しました。

今回は、「金属、エネ、農産物生産国の民主度低下」として、原油・農産物生産国の自由民主主義指数(生産量加重平均)を確認します。

主要な資源の生産国における自由民主主義指数を確認します。以下は、リチウム、PGM(ここではプラチナとパラジウムの合計)、銅、ニッケル、コバルトといった金属生産国の自由民主主義指数(生産量加重平均)の推移です。

このおよそ10年間、どの金属においても、生産国の自由民主主義指数は低下したことが分かります。リチウムも、銅も、ニッケルも、コバルトも、EV(電気自動車)や現代社会になくてはならない電子製品を作り続ける上で欠かせない金属です。

こうした金属を生産している国々の自由度・民主度が低下傾向にあります。同指数の低下は、出し渋りリスクの上昇とほとんど同じ意味です。同指数の動向は、こうした金属の間で、長期視点の供給減少懸念が強まっていることを、示唆していると言えます。

トウモロコシ、コーヒー、小麦、カカオといった農産物、および原油の生産国における自由民主主義指数(生産量加重平均)の動向も同様です。(原油についてはOPECプラスで原油の減産に参加している国の自由民主主義指数を参照)

このおよそ10年間、主要な農産物・原油の生産国の自由民主主義指数は低下したことが分かります。農産物の生産国には、米国やフランス、オーストラリアなど、西側の自由度・民主度が高い国が含まれていますが、そうであっても、長期視点で低下傾向があることに、留意が必要です。

金属、農産物、原油の生産国は、世界全体の自由度・民主度の低下の流れに即し、年々、自由度・民主度が低下している、すなわちこうした品目において、長期視点の供給減少懸念が強まっていることに、注意しなければなりません。

図:金属生産国の自由民主主義指数(生産量加重平均) 2013~2023年
図:金属生産国の自由民主主義指数(生産量加重平均) 2013~2023年
出所:V-Dem研究所およびEnergy Institute、FAOのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。