[Vol.1933] 有事に限界あり、株と金の順相関もある

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。66.79ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。3,047.26ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年05月限は16,865元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年05月限は516.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2039.76ドル(前日比22.36ドル拡大)、円建てで10,089円(前日比14円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月19日 20時42分時点 6番限)
14,727円/g
白金 4,638円/g
ゴム 344.5円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,030円/mmBtu(25年7月限 3月19日17時18分時点)

●NY金先物 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「有事に限界あり、株と金の順相関もある」
前回は、「3,000ドル到達の立役者は利下げ加速観測」として、9月から12月までのFOMCにおける3.75~4.00%への利下げ確率の推移を確認しました。

今回は、「有事に限界あり、株と金の順相関もある」として、S&P500指数と金(ゴールド)価格の推移を確認します。

現代の金(ゴールド)相場の分析手法について述べます。現代の金(ゴールド)相場が過去の常識と異なっていることを示す例を、二つ挙げます。一つ目は、「有事の金(ゴールド)買い」について、です。

過去75年間の金相場の動きを振り返ってみると、1980年前後に「山」を確認できます。いわゆる大規模な「有事」が多発した期間です。イラン革命、在イラン米国大使館人質事件、旧ソ連のアフガニスタン侵攻などが立て続けに起きました。このころ、安全資産(safe haven)、最後の拠り所(last resort)などとはやされ、金(ゴールド)相場は「山」を形成しました。

こうした価格上昇の山は、今となっては低山です。当時の上昇時は680ドル近辺でした。足元の価格は3,000ドル近辺です。例えば、足元の価格を富士山(標高3,776メートル)に置き換えてみると、当時の価格は関東山地の陣馬山(同855メートル)に相当します。陣馬山はハイカーの間で大人気の「低山」であり、初心者でも登りやすいと評されています。

あの歴史的な有事の同時多発をもってしても、金(ゴールド)相場において築かれる山は、陣馬山のような低山なのです。つまり、有事だけで、今の価格水準を説明することは不可能なのです。

二つ目は、「株と金(ゴールド)の逆相関」についてです。以下の通り、足元の価格水準は、「ともに」史上最高値水準です。つまりどちらも、記録的な高騰の最中なのです。逆相関とは、二つの価格において、片方が上昇している時、もう片方が下落する状態を指します。

どちらも上昇しているのであれば、逆相関とはいえません。局所的に逆相関となったことはあっても、長期視点では順相関といっても過言ではありません。

過去の常識である「有事の金(ゴールド)買い」「株と金(ゴールド)の逆相関」は、現代の金(ゴールド)市場を語る際に用いられるメインテーマではなくなっているといえます。「金(ゴールド)相場をイメージで語ることなかれ」、は筆者の本音です。

図:S&P500指数と金(ゴールド)価格の推移
図:S&P500指数と金(ゴールド)価格の推移
出所:ブルームバーグおよび世界銀行のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。