週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比0.63ドル高の64.11ドル、ブレント原油は0.53ドル高の68.13ドルとなった。

 先週の原油相場は方向感に欠ける展開となった。背景には、ロシア・ウクライナ情勢に端を発する地政学的リスクの高まりと、各国の経済政策、そして原油需給の変化といった複数の要因が複雑に絡み合ったことがある。

 週の前半は、供給不安を背景に価格が上昇した。ウクライナによるロシアの石油関連インフラへの攻撃リスクが高まったことや、米国による対ロシア追加制裁の可能性が意識され、原油市場には「リスク・プレミアム」が織り込まれた。これにより、原油価格には上昇圧力がかかった。さらに、米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間在庫統計で、市場予想を上回る原油在庫の減少が確認された。米国内における堅調な原油需要を示すものであり、需給逼迫への懸念が再燃したほか、米国のディスティレート(主にディーゼル)在庫が過去5年平均を大きく下回る水準で推移していることも、原油価格の下支え材料となった。一方で、週後半には原油相場は反落した。最大の要因は、夏季ドライブシーズンの終了による世界的な需要減速懸念である。秋に向けて供給が需要を上回るとの見方が広がり、価格の重しとなった。また、米国ではパウエルFRB議長の発言を受けて利下げ期待が強まる一方で、トランプ大統領とFRB理事との間で見られる対立が市場に政治的不透明感をもたらし、投資家心理を悪化させる場面も見られた。また、8月27日には米国がインドに対して追加関税を発動。インドがロシア産原油の輸入を続けていることを理由としたものだが、ロシア産原油の割引率の高さによりインドの精製業者にとっては依然として採算が取れる状況にある。そのため、世界的な需給への直接的な影響は限定的とされるが、市場の不確実性を高める要因として警戒感が強まった。

みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 今週の原油市場は、OPECプラスによる増産再開と世界的な需要鈍化懸念が重なり、上値の重い展開が予想される。OPECプラスは9月から約54.7万バレル/日の増産を開始し、日量220万バレルの自主減産分が解消されることとなり、市場に新たな供給圧力がかかる。一方で、IEAは、供給が需要を上回るとの見通しを示しており、在庫増加への警戒感も高まっている。需要面では、中国経済の減速が引き続き懸念材料。製造業・サービス業の指標が弱ければ、原油需要の先行きに対する不透明感がさらに強まる可能性がある。加えて、イラン情勢や米国・インドのエネルギー摩擦など、地政学リスクはくすぶるものの、今のところ市場への影響は限定的にとどまっている。地政学リスクやテクニカル反発で下支えされる一方、供給増が価格の上昇を抑える展開となり、上値は重くなりやすそうか。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

岡地株式会社
国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。