[Vol.2112] 国家の行動の動機は「法」から「権威」へ

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。58.41ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。4,233.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年05月限は15,340元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年01月限は443.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2538.6ドル(前日比10.25ドル拡大)、円建てで13,674円(前日比30円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月10日 15時16分時点 6番限)
21,551円/g
白金 7,877円/g
ゴム 330.6円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「国家の行動の動機は『法』から『権威』」へ
前回は、「民主主義後退は2010年ごろから先進国で開始」として、世界の法の支配指数(人口加重平均)を、確認しました。

今回は、「国家の行動の動機は『法』から『権威』」へとして、自由度が高い民主主義に分類される国、閉鎖的な権威主義に分類される国の数を、確認します。

V-Dem研究所の統計の中では、国家体制が四つに分類される場面があります。「自由度が高い民主主義」「選挙による民主主義」「選挙による権威主義」「閉鎖的な権威主義」です。以下の図は、自由度が高い民主主義に分類された国の数と、閉鎖的な権威主義に分類された国の数の推移を示しています。

「自由度が高い民主主義」に分類された国の数は、前回述べた「2010年」に急減し始めました。また、「閉鎖的な権威主義」に分類された国の数は第2次世界大戦後、低下傾向にありましたが、あの「2020年」に増加に転じました。

おおむね、自由民主主義指数の動向の箇所で確認した、自由で民主的な度合いが大きい国の数の減少が始まったタイミング、そして度合いが小さい国の数の増加が始まったタイミングと同じです。民主度の低下が権威主義台頭のきっかけになり得ることを、示していると言えます。

注目すべきは、近年の傾向です。「自由度が高い民主主義」に分類された国の数の減少と、「閉鎖的な権威主義」に分類された国の数の増加が同時進行したため、「閉鎖的な権威主義」に分類された国の数の方が、多くなっています。

このことは、全体的に国家の行動の動機の柱が「法」から「権威」へと移り始めたことを示唆していると言えます。言い換えれば、秩序は「法」からではなく「権威」からもたらされやすくなった、ということです。

このおよそ15年間を振り返れば、思い当たるふしがいくつもあります。国家のリーダーや要人たちがさまざまな場面で「国際法にのっとって対応する」「ルールに従って粛々と進める」などと発言をしてきました。

つまりそれだけ、世界全体を網羅する民主主義から醸成された法やルールが順守されない場面が増えてきたということです。「国際連合の機能不全」という言葉を聞くようになって久しいのもうなずけます。

なぜ、国際的な法やルールが順守されない場面が増えたのでしょうか。なぜ国連は機能不全に陥ってしまったのでしょうか。なぜ「閉鎖的な権威主義」に分類された国の数が「自由度が高い民主主義」に分類された国の数よりも多くなってしまったのでしょうか。

次回以降、こうした疑問への筆者の回答を述べます。

図:自由度が高い民主主義に分類される国、閉鎖的な権威主義に分類される国の数
図:自由度が高い民主主義に分類される国、閉鎖的な権威主義に分類される国の数
出所:V-Dem研究所のデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。