週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比1.7ドル高の65.19ドル、ブレント原油は2.05ドル高の69.51ドルとなった。

 先週は週間を通して上昇基調を強め、週末にはWTI原油が1バレルあたり65ドル前後、ブレント原油が69ドル台まで上昇し、いずれも週間で4%を超える値上がりとなった。週足ベースでは6月以来となる大幅な上昇幅となり、市場では3か月ぶりの大幅高となっている。

 上昇の背景には、複数の供給懸念が重なったことがある。特に大きな材料となったのは、ロシアがウクライナによるドローン攻撃でエネルギーインフラが被害を受けたことを受け、ガソリンやディーゼルなど燃料の輸出を制限した点である。これにより国際市場では供給不安が高まり、原油価格を押し上げた。また、OPECプラスの増産目標が十分に達成されていないことも供給余力の不足を意識させ、価格を支える要因となった。さらに、週中に発表された米国の原油在庫統計が予想以上の減少を示したことで、需給ひっ迫感が一層強まり、投資家の買い意欲を刺激した。

 一方で、米国経済指標が強い内容を示したことで、今後の利下げペースが鈍化するとの観測も浮上しており、需要面での上振れ期待をやや抑制する要素として意識された。また、ドル高進行したことも圧迫材料となった模様。しかし、全体としては供給リスクが前面に出たことで、原油相場は大幅な週間上昇を記録した。

みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 今週の原油相場は、供給不安と需要懸念が交錯する中で上下に振れる展開が予想される。上昇要因としては、ロシアによる燃料輸出制限やウクライナ情勢、中東地域の不安定化など地政学リスクが依然として市場心理を支えている点が挙げられる。加えて、米国の原油在庫が予想以上に減少した場合、需給逼迫感が一段と強まり、価格を押し上げる可能性がある。一方、下押し要因としては、OPECプラスや非加盟国による増産、世界経済の減速による需要鈍化、そして米利下げ観測ンお後退を受けたドル高が挙げられる。こうした背景から、来週の原油相場は材料に反応しやすく、レンジ相場となる可能性が高い。供給タイト化の下支えはあるが、需給バランスや金融・景気動向によっては上値の伸びが限定的となる展開が予想される。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

岡地株式会社
国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。