[Vol.2084] 原油は長期視点で「高止まり」している

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。60.17ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。4,038.44ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年01月限は15,625元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年12月限は462.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2430.64ドル(前日比32.34ドル拡大)、円建てで12,688円(前日比148円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月29日 18時45分時点 6番限)
20,048円/g
白金 7,360円/g
ゴム 314.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「原油は長期視点で『高止まり』している」
前回は、「行き過ぎた円安と輸入物価の『底上げ』」として、日本の原油輸入単価・ドバイ原油(2000年を100)およびドル/円相場を、確認しました。

今回は、「原油は長期視点で『高止まり』している」として、ドバイ原油(名目・実質)価格(年足)を、確認します。

物価高の動向に深く関わる原油相場について、述べます。原油は「経済の血液」と呼ばれ、その価格動向は、電気・ガス代、運送・交通やさまざまな部品・梱包(こんぽう)材のコストなど、あらゆる分野のコストに大きな影響を与えます。

以下は、長期視点の原油相場の推移です。2025年の水準は1990年代の安値のおよそ5倍です。足元の水準はウクライナ戦争が勃発した2022年に比べれば安いですが、それは中期的な動きに過ぎず、前回述べた2010年ごろ以降の「底上げ」も相成り、近年の水準が長期的に見れば大変に高いことを認識する必要があります。

ウクライナ戦争が勃発した2022年の前年からの原油相場の動向を振り返ると、2022年の年末ごろ以降、80ドルを挟んだプラスマイナス15~20ドルのレンジ相場で推移していることがわかります。

2025年はトランプ関税ショックが発生したり、中東とウクライナ情勢が改善する期待が浮上したりしたことで50ドル台を付ける場面がありましたが、それでも、上記のレンジの下限をおおむね維持していると言えます。

レンジ相場は、強い下落圧力と上昇圧力に挟まれた時に発生することがあります。現在のレンジ相場も、このような経緯で発生していると考えられます。

日本の物価高の一因である輸入物価の上昇・高止まりに、原油相場が高い水準でレンジ相場を演じていること、が深く関わっています。

この点より、物価高対策の一つに「原油相場の高止まりの是正」が挙げられます。高市首相は、この対策にどのように関わることができるか、外交政策とともに、注目していく必要があります。

図:ドバイ原油(名目・実質)価格(年足) 単位:ドル/バレル
図:ドバイ原油(名目・実質)価格(年足) 単位:ドル/バレル
出所:世界銀行のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。