[Vol.2095] OPECプラスに協調減産を止めてもらう

著者:吉田 哲
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原油反発。ウクライナによるロシアの石油施設への攻撃の報道などで。59.37ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。4,186.47ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。26年01月限は15,215元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。26年01月限は459.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2591.87ドル(前日比11.27ドル拡大)、円建てで13,844円(前日比27円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月14日 17時27分時点 6番限)
21,187円/g
白金 7,343円/g
ゴム 323.6円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「OPECプラスに協調減産を止めてもらう」
前回は、「原油相場の短期的材料」として、NY原油先物(期近)日次平均の推移を、確認しました。

今回は、「OPECプラスに協調減産を止めてもらう」として、OPECプラスの原油生産量と協調減産の動向(2020年4月~)を、確認します。

サウジアラビア、ロシア、イラク、クウェート、カザフスタンなど、OPECプラスに属する国々のほとんどが、西側諸国と考え方が離れている非西側諸国ですが、そのOPECプラスは2017年1月から、一部の期間を除き、原油の減産(人為的な生産量削減)を実施しています。

以下のグラフは、2020年5月に再開した協調減産のイメージを示しています。協調減産の体制下では、一部の例外国を除き、それぞれの国に生産量の上限が割り当てられます。そして、上限が割り当てられた国は、その上限を上回らないように生産活動を行っています。

現在の協調減産の体制においては、「埋め合わせ」の条項が設けられており、上限を上回って生産した場合、将来、上回った量を削減しなければなりません。埋め合わせの計画を提出する必要もあり、厳格に減産が行われていると言えます。

OPECプラスは、昨年12月の会合で、協調減産を2026年12月まで継続することを決定しました。また、同会合および今年5月の会合で、2027年の協調減産の基準量について協議を行うことが話し合われました。

この流れが加速すれば、今年11月30日の会合で、協調減産が2027年の年末まで、延長される可能性もあります。短期的には、自主減産の縮小という名目の増産も行われていますが、自主減産の縮小が終了しても、協調減産は終了しません。

協調減産の体制は、OPECプラスからの過大な供給が発生することを抑制しています。その協調減産が長きにわたり継続していることは、「原油相場の高止まり」の大きな要因だと言えます。

ガソリンの暫定税が廃止されたとしても、ドル/円の変動や、海外の原油相場の動向によって、再度、ガソリン小売価格が高騰する可能性があります。

減税や補助などに頼らず、安定的なガソリン小売価格の下落を実現するためには、OPECプラスの方針に影響を及ぼす必要があります。それを実現できない限り、日本の消費者が望む安定した長期的な安値を実現することは、難しいかもしれません。

図:OPECプラスの原油生産量と協調減産の動向(2020年4月~) 単位:千バレル/日量
図:OPECプラスの原油生産量と協調減産の動向(2020年4月~) 単位:千バレル/日量
出所:ブルームバーグのデータおよびOPECの資料を基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。