[Vol.2130] 原油生産減少の原因は自国の不正選挙

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米国によるロシア船籍とみられるタンカーの拿捕などで。56.42ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。4,438.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。26年05月限は16,120元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年02月限は416.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2226.3ドル(前日比32.40ドル拡大)、円建てで12,823円(前日比9円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月8日 18時30分時点 6番限)
22,921円/g
白金 10,098円/g
ゴム 348.3円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「原油生産減少の原因は自国の不正選挙」
前回は、「人口が減少するほど、生活が困難」として、ベネズエラの人口と亡命希望者の推移を、確認しました。

今回は、「原油生産減少の原因は自国の不正選挙」として、ベネズエラの輸出額とWTI原油価格および米国の対ベネズエラ制裁の推移を、確認します。

ベネズエラの原油生産量の推移を確認します。マドゥロ体制のもと、逆オイルショックが発生した後の2016年ごろから、同国の原油生産量が減少し始めました。前回述べた人口だけでなく、国家の収益を左右する原油生産量が減少しています。

原油生産量の減少のきっかけは、いくつか挙げられます。その一つに、逆オイルショックが発生し、一時的に生産活動が鈍ったことが挙げられますが、それまで同じ規模感で生産活動を続けてきたイランやイラクの原油生産量が、逆オイルショック後に増加していることを考えると、原油生産量の減少の理由を逆オイルショックだけに求めることはできません。

ベネズエラ固有の減少のきっかけには、石油関連施設の老朽化、そして米国による制裁をきっかけとした米国の石油企業の一部撤退などが挙げられます。

以下のグラフは、ベネズエラの原油生産量が深く関わる同国の輸出額(全体)と、これらに影響を与え得る世界の原油価格の指標の推移です。

輸出額が大きければ大きいほど、ベネズエラが獲得できる外貨の額は大きくなります。2015年ごろまで、原油価格の推移とベネズエラの輸出額の推移が似通っていたのは、原油価格という「単価」が上昇(下落)したことで、ベネズエラの主要な輸出品目である石油関連の品目から得られる外貨の額が増えた(減った)ためです。

ただ、2016年ごろから、輸出額と原油価格の推移の乖離(かいり)が目立ち始めました。原油生産量の減少が始まったためです。「単価」は上がれども、「数量」を増やすことができなくなったため、現在でも二つの数値は離れたままです。

なぜ、数量の源泉である原油生産量が減少しているのでしょうか。2015年のオバマ元大統領(民主党)の制裁に端を発し、2017年、2019年のトランプ大統領(1期目 共和党)の制裁の影響が大きいと考えられます。特に、2019年のトランプ大統領が科した制裁は、直接的に原油生産量を減少させるものでした。

2019年に米国が直接的にベネズエラの原油生産量を減少させる制裁を科した背景に、前年の2018年に、マドゥロ氏が大統領選で再選したことが挙げられます。日本政府も言及しているとおり、この選挙については、プロセスの正統性に対する内外からの疑義に対して十分な説明責任を果たさないまま、マドゥロ大統領の就任式が実施されました。

このことを受け、主要国の間で、マドゥロ大統領は「正当な大統領ではない」という認識で一致し、米国がベネズエラの輸出額を急減させうる原油生産量の減少を目的とした制裁を科しました(人道的なケースを除くとされています)。

これにより、ベネズエラは石油による収入減、政情不安拡大、そして人口減少に拍車がかかりました。

図:ベネズエラの輸出額とWTI原油価格および米国の対ベネズエラ制裁の推移
図:ベネズエラの輸出額とWTI原油価格および米国の対ベネズエラ制裁の推移
出所:IMFおよび世界銀行のデータをもとに筆者作成 イラストはPIXTA

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。