[Vol.2131] ベネズエラを資源の呪いから解放する?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。58.30ドル/バレル近辺で推移。

金反発。イラン情勢の悪化などで。4,474.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。26年05月限は16,030元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。26年02月限は432.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2191.35ドル(前日比1.85ドル縮小)、円建てで12,789円(前日比35円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月9日 17時32分時点 6番限)
23,243円/g
白金 10,454円/g
ゴム 348.1円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「ベネズエラを資源の呪いから解放する?」
前回は、「原油生産減少の原因は自国の不正選挙」として、ベネズエラの輸出額とWTI原油価格および米国の対ベネズエラ制裁の推移を、確認しました。

今回は、「ベネズエラを資源の呪いから解放する?」として、米国によるベネズエラへの大規模攻撃、および大統領拘束の背景(筆者イメージ)を、確認します。

トランプ米大統領の一連の行動は、石油利権目当て、内政干渉、人権侵害など、さまざまな思惑を振りまいています。ただし、記者会見では、自らの正当性を主張しました。

トランプ米大統領の記者会見および、この数回で確認したいくつかのデータをもとに考えると、米国によるベネズエラへの大規模攻撃、および大統領選拘束の背景は、以下のようになると、筆者はイメージをしています。

見方としては「主流」ではないかもしれませんが、トランプ米大統領がここまで思い切った行動をするからには、それなりの大義名分があるように思います。

特に、(1)については、国際社会全体においても、大きな意味があると考えられます。ベネズエラに対し、1998年のチャベス大統領誕生から続いている、自由民主主義指数の低下が示す「体を成していない」状態から脱却させる糸口を提供することは、大変に重要です。南米全体の政情の安定化、ひいては違法な物品の流通減少にも、貢献し得ます。

(1)および(2)に関わる点として、現実的にベネズエラの原油生産の回復は、米国の石油企業(≒シェブロン)の手助けがなくては、実現し得ないと考えられます。ベネズエラ産の超重質油の米国国内での精製を含め、制裁開始前に蓄積したノウハウは活用できると考えられます。

トランプ米大統領の思惑通り、米国主導でベネズエラの統治が進み始めれば、シェブロンによるベネズエラ産原油の商用利用が活発化する可能性があります。

この点により、OPECプラスの原油生産量が急に増えて原油価格が大きく下落する、という指摘がありますが、もともとベネズエラは減産実施国ではないこと(例外扱い)、サウジアラビアやロシアなどが多く扱う軽質油と異なる油種であること、急激な生産増加に資源の呪いの再来リスクが伴うこと、政情不安を抱えている地域でシェブロンの社員が操業に携われない可能性があることなどを考えれば、ゆっくり少しずつ、生産量は増加していき、原油相場にはそれほど大きな影響は及ばないと考えられます。

また、(5)に関わる点として、ウクライナのゼレンスキー大統領が、大統領選挙を実施する意向を示し始めています。同選挙が実施され、何らかの形で停戦が実現した場合、ウクライナ戦争をきっかけとして生じていたリスクプレミアム(リスクをきっかけとした価格上昇分)が剥落(はくらく)する可能性があります。

リスクプレミアムが剥落すれば、原油相場に下落圧力がかかりますが、その際、ベネズエラ情勢をきっかけとしたリスクプレミアムが存在すれば、その下落圧力が相殺される可能性があります。米国がベネズエラへの支援を本気で考えているのであれば、ある程度、原油相場は高い方が好都合です。

ベネズエラ情勢だけでなく、ウクライナ戦争にも関与できるトランプ米大統領は、他にもさまざまなことを考えている可能性があります。今まさに、目の前で起きていること、見えていることだけではなく、さまざまな要人の思惑、そして本レポートで述べたような数十年間の複数のデータなどにも目を向けることで、新しい見方ができるようになると思います。

図:米国によるベネズエラへの大規模攻撃、および大統領拘束の背景(筆者イメージ)
図:米国によるベネズエラへの大規模攻撃、および大統領拘束の背景(筆者イメージ)
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。