[Vol.2165] イラン・アフガンのテロ組織を挟み撃ち

著者:吉田 哲
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原油反発。中東情勢の悪化などで。75.57ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。5,286.61ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。26年05月限は16,835元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。26年04月限は572.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで3149.06ドル(前日比152.36ドル拡大)、円建てで17,289円(前日比303円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月3日 18時53分時点 6番限)
27,815円/g
白金 10,526円/g
ゴム 369.0円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「イラン・アフガンのテロ組織を挟み撃ち」
前回は、「原油相場『急反発』で取引が始まる」として、NY原油先物(期近)日次終値(日本時間3月2日午前8時まで)を、確認しました。

今回は、「イラン・アフガンのテロ組織を挟み撃ち」として、中東周辺で交戦状態にある国・地域(2026年3月時点)を、確認します。

以下の図は、中東周辺で交戦状態にある国・地域を示しています。米国は「壮絶な怒り作戦」と称してイスラエルとともに、イランを攻撃しました。

これを受けて、イランが報復攻撃を開始しました。報復攻撃は米国軍の関連施設やイスラエル国内だけでなく、米国と関わりが深いサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などにも及んでいると報じられています。

また、交戦状態は米国・イスラエルとイラン、アラビア海(ペルシャ湾)周辺国だけでなく、2月24日で4年目を迎えたウクライナとロシアの戦争が継続していたり、アフガニスタンの暫定政権であるイスラム武装組織「タリバン」と隣国パキスタンの間で2月27日に戦争状態に入ったりしています。パキスタンは今回の軍事行動を「正義の怒り作戦」と銘打っていると、報じられています。

米国とイスラエルは、イラン主要部を攻撃し、国連安全保障理事会で正当性を主張しました。

また、イランの最高指導者「ハメネイ師」を殺害しました(壮絶な怒り作戦)。ハメネイ師という約37年にわたりイランを導いてきた最高指導者失い、イランの体制が不安定化する懸念が生じています。

一方でイランは、中東各国の米軍施設やイスラエルに対して報復攻撃をしたり、米国と関わりが深いサウジアラビアやUAEなどを攻撃したりしています。また、石油供給の要衝である、アラビア海(ペルシャ湾)とインド洋の入り口であるオマーン湾を結ぶ「ホルムズ海峡」を事実上、封鎖したと報じられています。

こうした動きを受け、ウクライナはイランへの攻撃を行った米国を支持しました。イランがウクライナに侵略しているロシアに、ドローンやその技術を提供しているためです。一方ロシアは、米国とイスラエルが国際法に違反していると非難し、ウクライナ戦争の和平交渉から離脱することを示唆しました。

アフガニスタンの暫定政権であるイスラム武装組織「タリバン」は、米国・イスラエルがイランを攻撃する数日前に、米国からの攻撃時はイランを支援すると表明していました。

一方、パキスタンは27日、「正義の怒り作戦」と称してタリバンの軍事施設に攻撃を行いました。パキスタンは、「アフガニスタンが世界中のテロリストを集め、テロリストを輸出している」「パキスタンの人権を奪っている」「我々の忍耐は尽き果てた」などと、攻撃の正当性を主張しています。

米国のトランプ大統領が述べた作戦名にも「怒り」の文字が含まれています。昨年、同大統領は、中東などで活動する複数のテロ組織を支援し、核兵器の開発を再開しようとしているイランに対して「忍耐は切れた」と述べていました。核開発をめぐる交渉に進展が見られなかったためです。

このように考えると、今回の情勢悪化は、単に米国・イスラエルとイランの間の問題ではなく、「世界全体におけるテロやテロを支援する組織との戦い」という側面が浮き上がってきます。イランとアフガニスタンの国境の山岳地帯にあるとみられるテロ組織の根城を、東からパキスタンが、西から米国とイスラエルがうかがう構図ともいえます。

もしこの考え方が有効であれば、今回の作戦が終了するタイミングの決定には、米国とイスラエルだけではなく、パキスタンも加わることになります。この数日間、作戦の終了タイミングを聞かれたトランプ大統領がそれを明示しないのは、こうした背景があるからなのかもしれません。

パキスタンが軍事行動を開始した金曜日、米国・イスラエルが軍事行動を開始した土曜日は、ミラノ・コルティナオリンピックという平和の祭典が終わった週の後半でした。ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月24日は、北京オリンピック(冬季)が終わった週の木曜日だったことと似ています。

また、イランが支援するイスラム武装組織ハマスがイスラエルに対して大規模な奇襲攻撃をした2023年10月7日と、米国がベネズエラに軍事介入をした2026年1月3日も土曜日でした。

市場を含む社会をできるだけかく乱させずに行動する、という暗黙の了解が、できつつあるのかもしれません。

図:中東周辺で交戦状態にある国・地域(2026年3月時点)
図:中東周辺で交戦状態にある国・地域(2026年3月時点)
出所:Map Chartより筆者作成 イラストはPIXTA

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。