[Vol.2167] 「資源の呪い」からイランを解放したい

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。76.31ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。5,173.84ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。26年05月限は16,555元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。26年04月限は664.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2990.69ドル(前日比9.99ドル拡大)、円建てで16,292円(前日比76円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月5日 18時33分時点 6番限)
27,159円/g
白金 10,867円/g
ゴム 367.1円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『資源の呪い』からイランを解放したい」
前回は、「石油輸送の大動脈『ホルムズ海峡』封鎖か」として、各海上交通の要衝を通過する原油・石油製品の量(1日あたり)(2023年)を、確認しました。

今回は、「『資源の呪い』からイランを解放したい」として、トランプ米大統領のSNSへの投稿(2月28日)を、確認します。

なぜ今回、トランプ米大統領らは攻撃に踏み切ったのでしょうか。トランプ米大統領は同SNSで、イランが1979年のイラン革命後、47年間にわたり、「米国に死を」などと述べ、米国や米国の同盟国に敵対行為を行ってきたと主張しています。

444日に及んだ在イラン米国大使館人質事件、米兵241人が死亡したレバノンのベイルート兵舎爆破事件、米国の駆逐艦コールへの攻撃関与疑い、イラク戦争時・戦争後の多数の米兵殺害、中東周辺での継続的な米軍への攻撃と海上交通の妨害、代理勢力の攻撃により米国民に犠牲者が出たこと(2023年10月7日のハマスによる奇襲攻撃)、などの具体例を挙げています。

また、イランは、(ハメネイ師が設立に関わった)イラン革命防衛隊や、ガザ地区(パレスチナ自治区)のハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派といったテロ組織に、武器、資金、技術を支援していたと述べています。

そして、こうしたイランが、ウラン濃縮による核兵器の再開発とそれを弾頭とする長距離ミサイルの開発を継続したり、2025年12月に激化した反政府デモに武力を持って対応し、多数の犠牲者を出したりしたことにも言及しています。

トランプ米大統領は、こうした歴史的な背景があった上で、差し迫った脅威の排除、米国民の防衛、イランの核兵器保有の阻止などを目的に行動したといえます。「テロへの怒り」を共有できるイスラエルとパキスタンも、こうした考えに同調していると思われます。

イラン国内では、ハメネイ師の死を悼む市民がいる一方で、イランの首都テヘランで歓声や祝福の声も上がっているとの報道もあります。数千人が犠牲になったとされる1月の反政府デモを弾圧したイラン当局に反発心を抱いていたある人(テヘラン在住)は、「ハメネイ師には国民を死に追いやった責任がある」と述べたともいわれています。

イランはかつて原油を軸に貿易を展開し、大きな利益を手にしていました。しかし、リーマンショック(2008年)で石油需要が減少する懸念が生じたり、逆オイルショック(2015年ごろ)で原油輸出によって得られる外貨が急減したりしました。

また、2010年ごろからは、ESG(環境、社会、企業統治)拡大によって石油否定(石油の需要減少懸念)が拡大しました。核開発の手を緩めないイランに対し、米国や国連などが断続的な制裁を科したことも、イランへの逆風となりました。

こうした環境の中、イラン国内では徐々に、経済情勢が悪化したり、物価高が目立ったり、それらがきっかけで生じた体制批判が大きくなりました。2025年12月から2026年1月にかけて急拡大した反政府デモはこうした流れの結果であるといえます。

イランもまた、ベネズエラと同様、「資源の呪い」にかかっていたといえそうです。資源の呪いとは、天然資源を持つ国が、経済発展や民主化の面で、資源を持たない国よりも不利な状況に陥る現象のことです。

こうした事象が発生する原因に、自国の資源がばく大な利益をもたらした成功体験が挙げられます。成功体験によって、資源からの収入に依存して、他の産業が縮小したり、汚職が発生しやすくなったりします。(テロ組織の温床拡大)

また、当該資源を求める国から政治的な介入を受けやすくなったり、生産国との連携を強いられたりすることもあります。(非民主国家からの介入増加)

一度、資源の呪いにかかると、自力でそこから脱却することは困難であり、他国に助けを求めても資源目当ての支援が横行する場合もあります。資源を持っていることが大変な「呪い」のきっかけになってしまうのです。

トランプ米大統領が2月28日のSNSの最後に、イラン国民に向けて、一連の攻撃が終わったら、イラン政府を掌握するよう呼びかけました。資源の呪いから解放されるきっかけは米国がつくるので、その後はイラン国民で国を運営するよう、述べているように思えます。

図:トランプ米大統領のSNSへの投稿(2月28日)
図:トランプ米大統領のSNSへの投稿(2月28日)
出所:各種報道より筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。