[Vol.2168] 原油相場の動向は「差し引き」で考える

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。81.42ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。5,118.10ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年05月限は16,835元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年04月限は664.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2943.7ドル(前日比5.70ドル縮小)、円建てで16,036円(前日比223円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月6日 17時32分時点 6番限)
26,883円/g
白金 10,847円/g
ゴム 370.8円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「原油相場の動向は『差し引き』で考える」
前回は、「『資源の呪い』からイランを解放したい」として、トランプ米大統領のSNSへの投稿(2月28日)を、確認しました。

今回は、「原油相場の動向は『差し引き』で考える」として、ニューヨーク原油先物(期近)日次平均と変動要因の例を、確認します。

ニューヨーク原油先物相場は、3月2日の取引開始時、75ドルに達する急騰劇を演じました。しかしその後、同日の昼にかけて反落しました。同日午後12時時点の価格は70ドル前後でした。

この反落の要因に、米国の株価指数先物が急落したことが、挙げられます。今後、機雷などの兵器を用いたホルムズ海峡の封鎖や、海峡封鎖がアジア経済、引いては世界経済を停滞させること、世界全体のテロとの戦いがドロ沼化すること、などへの懸念が、米国の株価指数先物を急落させたと考えられます。

そして、米国の株価指数が急落したことで、将来の需要減少懸念が大きくなり、原油相場もつられて下落したと考えられます。

少し長い時間軸で原油相場を見渡します。以下はニューヨーク原油先物価格(期近・日次平均・2026年2月27日まで)の推移です。2023年の初旬から、同価格はおおむね75ドルという長期視点の高値水準を中心とし、高値95ドル程度、安値55ドル程度のレンジ内で推移してきました。

しばしば、「原油相場は下がった」という声を耳にします。確かにウクライナ戦争が勃発したタイミングに比べれば、下がっています。しかし、75ドルという水準は2002年の約3倍、2016年の約1.7倍、2020年の約2倍です(いずれも年平均ベース)。

毎月のように多くの品目の価格が上昇し続けていることの主因は、原油相場がこうした長期視点の高値水準で推移し続けていることだといえるでしょう。

高止まりは、一方的な上昇でもなく、一方的な下落でもありません。強い上昇圧力と強い下落圧力に挟まれている場合に起きます。グラフで示した例のとおり、近年の原油相場には複数の上昇圧力と複数の下落圧力がかかっています。

こうした環境では、一方的な上昇も一方的な下落も、起きにくいといえます。つまりそれは、足元の中東情勢が急激に悪化して、ホルムズ海峡が機雷などの兵器を用いた封鎖に追い込まれ、そうした状況が長期化した場合でも、一定の下落圧力が上値を抑制する可能性があることを示しています。

今後、長期視点の原油相場の方向性を考える際、中東情勢の悪化を受け、兵器を用いたホルムズ海峡封鎖が起きるかどうか、世界的なテロとの戦いがどのくらいの時間で収束するか、これらが世界経済(アジアに限定せず)にどれだけのダメージを与えるか、などに注目する必要があります。

中東情勢の悪化と並んで重要な材料は、OPECプラスの「協調減産(自主減産ではない)」の動向です。2027年も継続するのか、するのであれば規模はどの程度か、あるいは2026年12月で終了するのか、などに注目をする必要があります。

OPECプラスが2017年から続けてきた協調減産の体制(DoC)が終われば、OPECプラスは原油相場を支えることを諦めたと市場が見なし、2015年ごろに発生した逆オイルショックの時のように、原油相場は急落する可能性があります。

こうした事態になれば、兵器を用いたホルムズ海峡封鎖が行われていたとしても、55ドルを大きく割れる可能性もあるでしょう。

原油相場を動かす材料は一つではありません。たとえ今後、中東情勢が悪化の一途をたどったとしても、上昇と下落、両方の材料をまんべんなく見渡す必要があります。原油相場の動向は「差し引き」で考えることが、大変に重要です。

図:ニューヨーク原油先物(期近)日次平均と変動要因の例 単位:ドル/バレル
図:ニューヨーク原油先物(期近)日次平均と変動要因の例 単位:ドル/バレル
出所:Investing.comのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。