米・イラン対立を受けた原油見通し

著者:菊川 弘之
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 2019年のNY原油市場は、年末にかけて米中貿易協議「第一弾」合意期待からの株高に追随して、景気回復・需要回復期待が価格を押し上げた。年が明けて、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官が米軍に殺害されたことで、中東の地政学リスクが高まりを見せ、供給懸念が材料視されている。

 1月6日までイランは喪に服すとしているが、米国に対して300ヶ所を攻撃すると表明したほか、核濃縮の制限を撤廃するとも伝わっており、具体的な原油供給障害が生じると、上値リスクが急速に高まることになる。イスラム教シーア派組織のカタイブ・ヒズボラ(KH)は、トランプ大統領がイラクで米軍の駐留を続けるならば、空軍基地を瓦礫に変えると警告した。一方、トランプ大統領はイランが報復した場合に反撃すると発言しており、イランの52カ所を攻撃するとの警告も出している。

 昨晩のNY原油(2月限)は、続伸。前週末比0.22ドル高の1バレル63.27ドルで終えた。米イラン対立による中東情勢の緊迫化を受け、5日夜の時間外取引で64.72ドルと期近物として約8ヶ月ぶりの高値をつけたが、通常取引では今のところイランは宣言した報復攻撃を行っておらず、高値から押し戻されて陰線引けとなった。

 仮に急伸した場合でも、米国の戦略備蓄放出で、マーケットは直ぐに落ち着くとの見方も一因となっている。

 ただし、米軍によるイラン革命防衛隊司令官の殺害を受け、イスラム教シーア派が多数を占める隣国イラクの議会は米軍を含む外国部隊の駐留を終わらせる決議を5日に採択した。これに対しトランプ米大統領は、イラクに軍事基地建設に要した費用の返還を求めたほか、「我々に撤退を要求すればイラクに前代未聞の制裁を科す」と警告した。

 3月2日には「イスラエル総選挙」3月3日は、米国スーパーチューズデーが控えており、中東の地政学リスクは燻り続けそうで、短期的な買われ過ぎ感に対する調整が入ったとしても、相関の高い米株価が大崩れしない限りは、下値は限定的との見方も強い。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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