米・イラン対立を受けた原油見通し

著者:菊川 弘之
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 米石油協会(API)は日本時間8日午前6時半、米エネルギー情報局(EIA)は同9日午前0時半、それぞれ3日までの1週間の在庫統計を公表予定だが、市場予想は、前週比410万バレル減少で、過去の季節傾向通り、北半球最大の需要期で在庫減少トレンドが明確になれば、原油価格は高止まりする可能性が高い。

 石油輸出国機構(OPEC)プラスが、1月から実施している協調減産拡大も下値を支えるだろう。昨年12月のOPECの石油生産量は平均で日量2950万バレルと、11月の改定値から5万バレル減少していた。ナイジェリアとイラクが減産順守に取り組んだことに加え、新たな生産抑制実施に先立ってサウジアラビアがさらに減産したことが背景。OPEC全体の減産合意順守率は12月に158%と、11月の153%から上昇している。

 15日に予定されている米中貿易協議「第一弾」の署名が滞りなく行われれば、株価下落からの下げ圧力もかかりにくい。ただし、今回の米国の攻撃に関しては、中国・ロシアなどがイランを支持しており、貿易協議に影響が及ばないか注意はしたい。

 米国の制裁で既にイラン産油量は減少しており、上値リスクはサウジへの攻撃や、ホルムズ海峡封鎖などが実施された場合。このケースでは、値頃感無用となる。また、中東ではなく、米国本土テロなどが起きた場合は、原油だけでなく、マーケット全体に大きな変動を与える事態となろう。

 金価格が株高にも関わらず、原油以上に堅調なのは「米国vsイラン」の構図が、「米国・イスラエルvsイラン」や、「米国・サウジvsイラン」、「米国vsイラン・中国・ロシア」などの構図に拡大してリスクを織り込み始めているのかもしれない。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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