[Vol.2198] 「ホルムズ海峡リスク」は日常的リスクへ

著者:吉田 哲
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原油反発。中東情勢の悪化懸念などで。87.35ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10得年債利回りの反発などで。4,818.09ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年09月限は17,080元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年06月限は618.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2729.29ドル(前日比8.61ドル縮小)、円建てで14,704円(前日比14円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月20日 19時09分時点 6番限)
25,234円/g
白金 10,530円/g
ゴム 392.5円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「エビデンス(証拠)を伴う長期のテーマ」
前回は、「エビデンス(証拠)とナラティブ(物語)」と題して、ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージ(2026年2月28日以降)を、確認しました。

今回は、「『ホルムズ海峡リスク』は日常的リスクへ」と題して、リスクのイメージを、確認します。

原油相場が長期視点で高止まりする可能性が出てきています。テールリスクに分類されていたホルムズ海峡関連のリスクが、日常的に発生するリスクに分類される可能性が出てきたためです。

このことをもとに、今後数回にわけて、原油相場を下落させるための、ある意味「禁断の方法」を述べます。

ニューヨーク原油先物の、2026年5月限(ぎり)と27年5月限の価格推移を確認します。前者は今年の3月20日前後に、常時100を超える限月(げんげつ)の中で最も、取引最終日までの期間が短くかつ、取引量が多い「中心限月」になりました。当該限月は4月21日に、後者は27年4月20日に最終取引日を迎えます。

足元の原油相場が高いのか安いのか、さまざまな議論がありますが、世界の指標であるニューヨーク原油先物の期近(きぢか)・中心限月については、4月上旬をピークに大幅に下落していると言えます。

報じられているとおり、中東情勢の鎮静化期待、これによるホルムズ海峡の解放期待、これによる原油供給の回復期待など、短期視点の思惑が大幅下落の要因でした。

ですが、長期的な思惑を含む27年5月限については、高止まりしています。この値動きは、長期視点の思惑は根強く残っていることを、示唆していると言えます。

長期視点の思惑とは、どのような思惑なのでしょうか。図に示したとおり、「ホルムズ海峡に関わるリスク」が、テールリスクから、日常的に発生するリスクに移動したと考えられることが、そうした思惑を大きくしていると考えられます。

テールリスク(Tail risk)とは、ほとんど発生しないが発生した場合の影響が甚大であるリスクのことです。青い線の形状(右下)が、Tail(尻尾)のように見えるのが特徴です。

これまで、イランが持つ外交カードの一つである「ホルムズ海上封鎖」は、湾岸産油国や自らにもダメージを与える諸刃の剣の意味もあり、かつ世界全体にかつてないほどの甚大内ダメージを与え得るため、多くの市場関係者の間で、このカードが切られることはない(封鎖は起きない)と考えられていました。

だからこそ、同リスクはテールリスクに分類されていたのですが、2026年2月28日の、米国とイスラエルの攻撃、およびイランの報復開始を機に、このカードは切られてしまいました。

3月にトランプ米大統領が何度か、航行の際に護衛をつける、航行は安全である、という趣旨の発言をしましたが、それでも航行した船舶の数が回復しなかったこと(次回以降述べます)は、切られないと思っていた同カードが切られ、ホルムズ海峡の安全神話が崩壊したことが影響していたと考えられます。

こうしたことを受けて、ホルムズ海峡はそもそも安全ではない、この海峡を通過するためは、イラン革命防衛隊と交渉したり、航行の際に支払う保険料を多く払ったりするなどの相応の準備が欠かせなくなった、などの認識が急速に広がりました。

「もう、自由に航行できるホルムズ海峡は戻ってこない」という思惑は、長期視点の原油の供給減少懸念を強めました。このことが、足元、1年後の限月の価格が高止まりしている要因であると、考えられます。

国内大手メディアに「原油価格が安い時代は終わった」という趣旨の見出しの記事が掲載されました。筆者も、そのとおりだと考えています。

図:リスクのイメージ

図:リスクのイメージ
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。