米国によるイラン要人殺害事件の背景③

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。中東情勢の混迷などで。62.87ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの低下などで。1,586.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年05月限は13,190元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年03月限は508.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで614.25ドル(前日比11.55ドル拡大)、円建てで2,149円(前日比12円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(1月8日 18時53分頃 先限)
 5,516円/g 白金 3,367円/g 原油 43,180円/kl
ゴム 202.3円/kg とうもろこし 24,240円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「米国によるイラン要人殺害事件の背景③」

前回は「米国によるイラン要人殺害事件の背景②」として、2020年1月3日(金)にイラクで発生した、米国によるイラン要人殺害事件に関連し、事件の数カ月前から起きていた6つの事案について書きました。

今回は、事件がきっかけで、これらの事案に起き得る変化が、向こう11カ月間、再選を目指して戦うトランプ氏に利する要素がある点について書きます。

事件がきっかけで、米国国内において以下の変化が起きれば、トランプ氏は選挙戦を有利に進めることができるとみられます。

・米国民を守り、多額の費用が生じる戦争の長期化を避ける姿勢を示す。
・米国民の愛国心をくすぐる。
・中東での混乱を利用し、積み上がった原油の過剰在庫を取り崩す機会を作り、米国のエネルギー会社にメリットを与える。
・世間の目を、ロシア疑惑などの選挙戦で不利になる疑惑から目をそむけさせる。

このようなメリットを一度に享受するために、過去数カ月間で起きた事案や大統領選挙までのスケジュールを考慮した上で、事件を起こした可能性がゼロではないと筆者は思います。

イランはすでにさまざまな報復を開始しています。

ただ、過去数カ月間、米中貿易戦争において合意ムードが強まってきていたため、仮にイランからの報復が頻発して中東情勢の緊張が強まり、世界経済の減速懸念が強まったとしても、世界規模の懸念である米中貿易戦争を鎮静化させることで、中東での懸念の拡大を相殺しようとする可能性があります。

トランプ大統領は、貿易戦争の相手国である中国、中東で衝突するイランやイラク、それぞれを手玉に取りながら“全体的に”懸念を低下させながら、大統領選挙を戦うつもりでいるのかもしれません。

図:イラン要人殺害事件につながる複数の事案とトランプ大統領の思惑
イラン要人殺害事件につながる複数の事案とトランプ大統領の思惑

出所:筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。