米国によるイラン要人殺害事件の背景②

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。62.86ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの低下などで。1,569.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年05月限は13,185元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年03月限は502.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで590.95ドル(前日比11.65ドル縮小)、円建てで2,068円(前日比11円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(1月7日 17時9分頃 先限)
 5,459円/g 白金 3,391円/g 原油 43,060円/kl
ゴム 202.1円/kg とうもろこし 24,400円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「米国によるイラン要人殺害事件の背景②」

前回は「米国によるイラン要人殺害事件の背景①」として、2020年1月3日(金)にイラクで発生した、米国によるイラン要人殺害事件について、筆者が考える動機の全体像について述べました。

事件の数カ月前から、資料内左の①から⑥の事案が目立っていました。

イランやイラク、サウジといった中東だけでなく、イランの核開発という点ではそれを懸念する欧州諸国、そしてイランと同じく核開発を実行しているとみられる北朝鮮、北朝鮮の核を強く懸念する日本などの周辺国、また、原油生産量が急増して過剰在庫が積み上がったままの米国、貿易戦争の渦中にある米国と中国など、世界各地で同時に複数の事案が発生していたわけです。

これらの事案について、トランプ大統領は資料中央のような思惑を抱いていたと考えられますが、実際に、イランの要人を殺害したことで、これらの事案がどのように変化すると考えられるでしょうか?

資料内右のにかいたとおり、事件を起こしたことで、①米国人に被害が生じる戦争をやめるきっかけが生まれ、②イランの核合意違反をさらに強くけん制することができ、③米国のエネルギーの販売網が拡大し、④大統領選に向けてトランプ氏に不利な事柄から世間の目がそれ、⑤サウジとの蜜月がさらに深まる、などの変化が生じると考えられます。

このように考えれば、今回の事件は、この数カ月間で目立った複数の要素に、一度に大きな変化をもたらすきっかけになったと言えます。トランプ大統領が意図して、大きな変化をもたらすために、事件を起こした可能性はゼロではないと筆者は思います。

なぜなら、事件後に生じる変化は、あと11カ月間、再選を目指して戦うトランプ氏に利する要素が複数存在するためです。次回、複数の事案に一度に大きな変化を生じさせたことによる、トランプ大統領の選挙戦を戦う上でのメリットを書きます。

図:イラン要人殺害事件につながる複数の事案とトランプ大統領の思惑
イラン要人殺害事件につながる複数の事案とトランプ大統領の思惑

出所:筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。