[Vol.2269] やはり60日間で歴史を変えられなかった

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。80.38ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。4,110.26ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年09月限は16,685元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年09月限は538.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2430.56ドル(前日比33.64ドル縮小)、円建てで12,713円(前日比133円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月4日 19時50分時点 6番限)
21,078円/g
白金 8,365円/g
ゴム 419.9円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「やはり60日間で歴史を変えられなかった」
前回は、「『戦時下のレンジ』を維持する原油相場」と題して、NY原油先物価格(2026年 中心限月 日次平均)について、述べました。

今回は、「やはり60日間で歴史を変えられなかった」と題して、2026年下半期の原油相場の動向を占う重要な要素について、述べます。

2026年6月、米国とイランは戦闘終結に向けた協議を開始するための覚書に署名しました。この覚書は、トランプ米大統領、バンス米副大統領、イランのガリバフ国会議長が署名し、60日間で、恒久的な停戦や安全保障、核問題、経済制裁などについて協議し、最終合意を目指すという内容でした。

イラン革命(1970年代後半)後、およそ半世紀にわたり対立を続けてきた両国が交渉のテーブルについたことは大きな前進であり、市場でも「中東情勢は劇的に改善するのではないか」との期待が広がりました。この動きが、原油相場を一時、戦時下のレンジの下限である70ドル弱まで押し下げました。

しかし、この60日間で歴史を大きく変えることはできませんでした。二国間だけで完結する問題ではないためです。核開発、安全保障、経済制裁、宗派対立、中東の周辺国との関係、さらにはイランが影響力を持つとされる武装組織の存在、イランに影響力を持つとされる非西側諸国の存在など、多くの課題が複雑に絡み合っています。

一度、署名が破棄されたことは、今後の交渉をより難しくしたといえます。双方が今まで以上に疑心暗鬼になり、仲介国があったとしても、交渉のテーブルに着くことを拒む可能性が高まったためです。

以下の図は、2026年下半期の原油相場を左右する主な要因を整理した資料です。当初、多くの市場関係者は、60日間の協議が順調に進めば、中東情勢の鎮静化によって原油相場は急落すると考えていました。しかし、この前提が崩れ、逆に反発色を強めています。

また、短期的な原油相場の反落を受けた利上げ確率の低下、米中間選挙を前にしたトランプ大統領からの「予防的利下げ」の発言が出ることへの思惑など、株高・原油高の図式が強まる観測が浮上しています。

さらには、中東情勢の再悪化(ホルムズ海峡、バブ・エル・マンデブ海峡の、二つの海峡の同時封鎖懸念)、中東の代替として機能している米国における原油在庫(戦略備蓄)急減、石油輸出国機構(OPEC)プラスによる協調減産の継続観測など、供給面を引き締める材料も存在しています。

図:2026年下半期の原油相場の動向を占う重要な要素

出所:各種情報源を基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。