[Vol.2275] インフラ・信仰の対象としての株価指数

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。82.90ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。4,453.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。27年01月限は17,900元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。26年09月限は557.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2,701.85ドル(前日比2.60ドル縮小)、円建てで14,241円(前日比85円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月13日 13時32分時点 6番限)
23,109円/g
白金 8,868円/g
ゴム 426.5円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物(期近) 月足 単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 月足 単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「インフラ・信仰の対象としての株価指数」
前回は、「金融業界『みんなで』株価指数を支える」と題して、SNSがもたらす社会・経済への影響(一例)について、述べました。

今回は、「インフラ・信仰の対象としての株価指数」と題して、コモディティアナリストが考える米主要株価指数の長期上昇の背景について、述べます。

この数回で、主要株価指数の長期視点の上昇について、「銘柄入れ替え」という仕組みと、「思惑(期待・懸念)」という人間の感情(SNSが増幅)という、二つの側面から考えてきました。

以下の図は、コモディティアナリストである筆者が考える、米国の主要株価指数の長期上昇の背景を整理した資料です。経済成長や企業業績の拡大という本来の要因に加え、いくつかの株価指数特有の事情があります。

まず、「銘柄入れ替え」です。このことは、当該株価指数を基準とする投資信託や上場投資信託(ETF)の運用に直接的に影響を与えます。もちろん、年金の運用や個人の資産形成に大きな影響を与えます。

その意味では、株価指数は、多くの人の将来の生活と結び付いたインフラ(社会基盤)であり、銘柄入れ替えはインフラを整備・増強する作業だともいえます。

インフラが大きく毀損(きそん)することを望む人はほとんどいません。株価が急落すれば、投資家だけでなく、企業、金融機関、年金などにも影響が及びます。景気悪化を伴えば、政府や中央銀行に対策を求める声も強まります。結果として、金融緩和、財政支出、減税などが行われ、景気だけでなく株式市場を下支えすることがあります。

もちろん、政策当局の目的は株価そのものを上昇させることではありません。しかし、経済を支える政策と株価を支える力が、結果として同じ方向を向くことがあるのです。インフラの整備・増強は社会的な命題であることが、意識されているためだといえます。

筆者は、すでに株価指数の長期上昇も社会的な命題になっていると考えています。以前に話題になったトランプ口座など、子どもの口座で金融商品を保有する施策は、株価指数がインフラという側面を持ちつつあることを、よりどころとしているといえそうです。

筆者はここに、もう一つ「信仰」という言葉を加えたいと思います。少し刺激的な表現ですが、宗教的な意味ではありません。

長期投資の世界では、「経済は長期的に成長する」「優良企業は利益を増やす」「株価指数は短期的に下落しても、長期的には上昇する」という考え方が広く共有されています。そして、実際に米国の主要株価指数が長期上昇してきたことで、この考えに対する信頼はさらに強まっています。

つまり、「上昇してきたから、これからも上昇すると考える人が増える。そう考える人が増えるから、長期視点で資金が流入する」という循環が存在し、今後もそれが続くと強く考えられているのです(信仰に似ている)。

こう考えると、主要株価指数には、「銘柄入れ替え」というゲタ、「みんなで信じて支える」という社会的な思惑が重なっているように見えます。

これは米国の株価指数の影響を強く受ける、日本を代表する株価指数である日経平均株価も無関係ではありません。日本でも資産形成を促す政策、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の普及、企業統治改革などを通じ、家計と株式市場の距離は大いに縮まっています。

企業利益や名目経済が成長することを大前提としつつ、米国で起きたような株価指数の「インフラ化」が日本でも進むのであれば、日経平均10万円という水準も、長期的には全くあり得ない数字とは言い切れません。そのころには、米国の主要な株価指数は、大きく水準を切り上げているでしょう。

図:コモディティアナリストが考える米主要株価指数の長期上昇の背景
図:コモディティアナリストが考える米主要株価指数の長期上昇の背景
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。