新型コロナウィルスと金価格 その4

著者:近藤 雅世
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 これまでコロナウィルスと金価格の関係について3回述べてみた。初期の状態からかなり深刻な事態となり、コロナウィルスの先行きの状況は不透明でまだ終息の気配は見られない。

 World Gold Councilから、新型コロナウィルスの金価格への影響に関するコラムが出た。WGCはどのようにこの事態を捉えているかを見てみたい。まず2002年後半から2003年にかけて、中国南部で流行したSARSとの比較を行っている。当時の中国の金の需要は、SARSが流行していた2003年第2四半期は、過去最低よりも更に低くそれまでの平均より▲10~15%減少したという。しかし、SARSが8月に終息すると、2003年の下半期にはそれを補って余りあるほど金の需要は回復し、年間平均に達したという。

 ただ、金価格については、当時と今は比較できないという。なぜなら、2001年の同時多発テロを受けて、米国等の連合軍は2003年3月にイラクに侵攻して第二次湾岸戦争が勃発しているため、金価格はSARSよりも戦争に影響されたためだ。

 また、当時の中国と現在の中国の経済規模は大きく異なり、世界に対する影響力も格段に大きくなっている点を強調している。中国の金の需要も、当時は世界の8%に過ぎなかったが、現在では世界の28%を占めており、中国と台湾、香港を含めた拡大中国の金需要は世界の30%に及ぶ。

 結論として、中国の金需要は今年第1四半期・第2四半期は10~15%縮小する可能性がある。落ち込んだ需要が回復するか、軟化を続けるかは、流行の期間と経済成長への影響度合いによるだろう。金価格への影響は明確ではないとしている。流行が比較的迅速に解決され、世界的な影響が抑制された場合は、中国の金需要への影響はよりソフトで、価格への影響も限定される可能性がある。一方、流行が更に拡がり、投資家のセンチメントに影響を与え続ける場合、世界的な経済成長が減速する懸念で、質への逃避という流れにより、金価格は持続的なプラスの影響を受ける可能性があるとしている。
 

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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