米シェールの“生産効率”を維持するために必要なこと

著者:吉田 哲
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原油反落。主要株価指数の反落などで。23.79ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,634.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年09月限は9,855元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年06月限は258.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで905.5ドル(前日比17.6ドル拡大)、円建てで3,107円(前日比43円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(3月26日 19時49分頃 先限)
 5,673円/g 白金 2,566円/g 原油 25,310円/kl
ゴム 151.3円/kg とうもろこし 23,300円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「米シェールの“生産効率”を維持するために必要なこと」

今回は「米シェールの唯一の強味!?上昇し続ける生産効率」として、シェール主要地区の生産効率の“質”の面に注目します。

“数×質=量”として、原油生産量をイメージした場合、量は原油生産量で、数は油井の数、質は“生産効率”を示す、1油井あたりの原油生産量、と置き換えることができるでしょう。

前回までの数回で書いた“開発指標”は、後の油井の数に関わるものであるため、おおむね“数”の話でした。

今回は、EIA(米エネルギー省)が毎月公表する、新規1油井当たりの原油生産量という“質(生産効率)”についてです。

以下のグラフは、EIAが公表している、米シェール主要地区における新規1油井あたりの原油生産量(主要7地区平均)です。

この新規1油井あたりの原油生産量は、油井の数がいくら増えても減っても、それに応じて上下するものではありません。

“質(生産効率)”の変動要因は“技術”と“投じることができる資金”なのだと筆者は考えています。

シェール革命が起きた当初、坑井1つにつき、地中に1つの管があり、そこから原油を抽出していました。

しかし今では、管が地中で枝分かれし、1つの坑井から抽出できる原油が多くなりました。また、掘削する地点を探索する技術も向上し、非効率な掘削を行わなくなっています。

これらはいずれも、技術革新による質の向上の例です。

“投じることができる資金”については、技術革新によって獲得した新しい技術を行使するために必要な資金、つまり質を維持するための資金です。

原油相場が急落し、米シェールの生産量が減少すると考えられています。

これは、リグを稼働させるための資金繰りだけではなく、新しい技術を行使した高い生産効率を維持することが厳しくなり、その結果、原油生産量が減少して起きるのだと思います。

次回(4月13日)の同統計で公表される、原油価格が急落した3月の“質”にまずは注目です。

図:米シェール主要地区の新規1油井あたりの原油生産量(主要7地区平均)
単位:バレル/日量
米シェール主要地区の新規1油井あたりの原油生産量(主要7地区平均)

出所:米エネルギー省(EIA)のデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。