NY原油、1983年の取引開始以来、価格が初のマイナス②

著者:吉田 哲
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原油反落。米国内の原油在庫が容量一杯になる懸念などで。11.47ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,723.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年09月限は9,715元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年06月限は210.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで957ドル(前日比27.6ドル拡大)、円建てで3,352円(前日比23円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(4月22日 20時19分頃 先限)
 5,879円/g 白金 2,527円/g 原油 19,020円/kl
ゴム 148.7円/kg とうもろこし 21,980円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「NY原油、1983年の取引開始以来、価格が初のマイナス②」

前回は「NY原油、1983年の取引開始以来、価格が初のマイナスに①」として、今後数回に分けて、4月20日(月)のNY原油先物の終値が、マイナス圏入りしたことについて書きました。

今回は「NY原油、1983年の取引開始以来、価格が初のマイナスに②」として、NY原油が一時的にマイナスになった直接的な要因と考えられる“米国国内の原油在庫の容量不足”について書きます。

以下の図は、WTI原油の集積地として知られるオクラホマ州のクッシング地区における、原油の在庫使用率です。

4月10日時点で69%と、特に3月下旬から上昇傾向にあります。この在庫使用率は、貯蔵できる在庫の許容量に占める実際の原油の在庫量です。

具体的には、同日時点の原油在庫は5288万バレルで、貯蔵できる在庫の許容量は7609万バレルでした。

在庫が増加する要因はいくつかあります。消費減少、生産増加、輸入増加などです。

この中で、最も重要で重大な影響を及ぼしているのが、消費減少です。実質的な原油の消費と言える、精製施設への投入量が大きく減少しています。(次回以降、データを用いて説明します)

在庫使用率の上昇は、今後新たに収容できる在庫量が低下していることを意味します。

先述の例で言えば、4月10日時点から2321万バレル在庫が増えれば、満杯になりこれ以上、同地区では在庫を保持できなくなります。報道では、来月にも一杯になると言われています。

この点が、4月21日(火)の20年5月限の買い建玉を決済させる大きな動機となったと見られます。

買い建玉の決済は、売り注文、ですので、在庫を保有することを回避する売り注文、中にはお金を払ってでも売り注文を成立させたい注文が増え、マイナス圏に至るまで、価格が下落した、と考えられます。

図:オクラホマ州クッシング地区の原油の在庫使用率
オクラホマ州クッシング地区の原油の在庫使用率

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者推計

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。