減産初月、OPEC側は減産順守できず

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。主要株価指数の反落などで。35.24ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1,748.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年09月限は10,315元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年07月限は278.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで873.3ドル(前日比3.8ドル縮小)、円建てで3,135円(前日比4円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(6月1日 19時45分頃 先限)
 6,003円/g 白金 2,868円/g 原油 26,460円/kl
ゴム 154.1円/kg とうもろこし 22,730円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「減産初月、OPEC側は減産順守できず」

今回は「減産初月、OPEC側は減産順守できず」として、先月29日(金)に海外主要メディアが公表した、独自調査による、OPECの2020年5月の原油生産量と、減産の順守状況について書きます。

協調減産は、2020年3月に一度終了したものの、翌々月の5月から、再開しました。

減産そのもののルールについて、基準となる生産量(①)は、サウジとナイジェリアを除き、2019年1月から2020年3月までの減産時と同じですが、削減予定量(③)は、現在の減産の方が、日量450万バレル程度、多いです。

OPECは3月までに比べて、削減量を強化して減産を再開したわけですが、その初月となった5月の減産順守率は、100%という減産順守の目安を下回る、74%でした。

一見すると、サウジや減産に参加する10カ国全体の、削減量(⑤)が、これまでの減産よりも大きく見えるため、OPECの減産へかける思いが強そうに見えます。

しかし、サウジの減産時の基準となる生産量(①)が日量1100万バレルと、高めに設定してあるため、多少の削減でも削減量が大きく見える、という数字のトリック的な要素もあります。

また、強化した減産であり、初月ということもあり、減産を順守できなくても問題ない、完璧ではないが頑張った、ととるか、守れていないものは守れていない、しかも、7月以降、現在よりも削減予定量が小さくなるため、小さくなることを見越して、手を抜いて減産をしているのではないか、ととるか、さまざまな見方ができます。

とりあえず、原油市場は、このデータが公表された金曜日の夕方(日本時間)以降、WTIベースで35ドルに乗せるなど、反発色を鮮明にしているため、減産非順守のOPECのデータを意に介していないか、完璧ではないが頑張ったととらえていると、考えられます。

図:OPECの2020年5月の原油生産量と減産順守状況 単位:百万バレル/日量
OPECの2020年5月の原油生産量と減産順守状況
 
出所:海外主要メディアのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。