米国の原油生産量の見通しにおける、興味深い矛盾

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。36.62ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,738.60ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年09月限は10,375元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年07月限は266.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1735.98ドル(前日終値比1.234ドル縮小)、円建てで3,154円(前日終値比6円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(6月12日 19時0分頃 先限)
 5,980円/g 白金 2,826円/g 原油 26,650円/kl
ゴム 159.3円/kg とうもろこし 22,610円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「米国の原油生産量の見通しにおける、興味深い矛盾」

前回は「サウジが自主減産をやめたわけ」として、先月末から今月にかけて複数の機関が公表した5月の原油生産量のデータをもとに推計される、OPEC側の、7月から3カ月間で埋め合わせをしなければならない削減量について書きました。

今回は「米国の原油生産量の見通しにおける、興味深い矛盾」として、6月9日(火)にEIA(米エネルギー省)が公表した、月次の短期見通しで示された米国の原油生産量の見通しについて、書きます。

米国の原油生産量の見通しは、以下のグラフのとおり、来年の春ごろまで、減少することが見通されています。

これは、今月に公表された短期見通しでも、先月に公表された短期見通しでも、同じです。

そしてその後、2021年の年末にかけて、回復し、今年の夏の見通しの水準と同じくらいになる、ことも同じです。

一方、目先、減少する見通しであることについて、その程度はやや異なります。

5月公表分よりも、6月公表分の方が、低下の程度は、大きいことがわかります。

6月公表分の見通しは、5月半ば以降、6月初旬にかけて作成されたと考えられます。

同様に、5月公表分の見通しは、4月半ば以降、5月初旬にかけて作成されたと、考えられます。

どちらの見通しが、高い原油価格を参照しているのでしょうか?

マイナス価格を付けた4月20日以降、一昨日まで、大きな下落を伴わず、上げ続けたことからもわかる通り、5月半ば以降、6月初旬に作成された見通しの方が、高い原油価格を参照しているわけです。

にもかかわらず、原油生産量の見通しは、6月公表分の方が、弱気です。

3月の原油価格の暴落によって、米国全体の原油生産量のおよそ7割と推計されるシェールが受けたダメージが大きく、回復がまだ先になることを示唆しているとみられます。

図:米国の原油生産量の見通し 単位:百万バレル/日量
米国の原油生産量の見通し

出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。