リビアの状況はシビア。もはや産油国の体をなしていない

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反落。主要株価指数の反落などで。38.06ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1,770.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)端午節のため休場。

上海原油(上海国際能源取引中心)端午節のため休場。

金・プラチナの価格差、ドル建てで966.3ドル(前日終値比4.2ドル縮小)、円建てで3,308円(前日終値比3円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(6月25日 18時36分頃 先限)
 6,078円/g 白金 2,770円/g 原油 27,200円/kl
ゴム 157.4円/kg とうもろこし 22,590円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「リビアの状況はシビア。もはや産油国の体をなしていない」

今回は「リビアの状況はシビア。もはや産油国の体をなしていない」として、この数年間のリビアの原油生産量に注目します。

2020年6月現在、OPEC(石油輸出国機構)は13カ国あり、リビアは、そのOPECを構成する国の一つです。

OPECに加盟している以上、石油の輸出を手掛けていることが前提ですが、今年に入り、同国の政情不安を主因として、原油生産量が急減してます。

以下のグラフのとおり、リビアの原油生産量は、2019年12月時点で日量115万バレルでしたが、2020年5月時点で日量8万バレルまで減少しました。

原油相場への影響は、例えば、OPEC加盟国の一つで政情不安をきっかけに原油生産量がほとんどなくなっている、産油国の体をなしていない、異常事態だ、など、不安心理を強める要因と認識されれば、原油価格の上昇要因になります。

一方、今後、生産量が急回復した場合、強い供給圧力となる可能性がある、潜在的な供給増加要因として、警戒すべきだ、などと認識されれば、原油価格の下落要因になります。

往々にして、マーケットは良いところどり、ご都合解釈を、することがあります。

足元、原油相場が上昇すれば、世界の景気が回復しているムードが強まったり、4月のマイナス価格後、反発してきた過程で原油関連の金融商品を購入した投資家らの心理状態がよりよくなったりし、さまざまな側面から、投資ムードが改善する要因になります。

新型コロナの感染拡大、米中問題の悪化、人権問題の噴出など、複数の世界規模の重大な懸念が発生している中で、投資ムードの改善は、多くの投資家が欲するもの、と考えられます。

その意味では、リビアの原油生産量の件は、上昇にも下落にも、どちらの材料にも解釈することができますが、多くの投資家が欲するのは“上昇”と考えられることから、同国の原油生産量の動向は、原油相場に取って、上昇要因、と解釈することができます。

図:リビアの原油生産量 単位:百万バレル/日量
リビアの原油生産量

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。