クッシング地区の原油在庫率は再び上昇し始めた

著者:吉田 哲
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原油反発。主要株価指数の反発などで。41.41ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,939.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年09月限は10,670元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年09月限は294.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで959.7ドル(前日比18.2ドル拡大)、円建てで3,439円(前日比34円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

大阪市場は以下のとおり。(7月27日 20時7分頃 先限)
6,581円/g 白金 3,142円/g
ゴム 158.7円/kg とうもろこし 22,550円/t

●WTI原油先物(期近) 日足 (単位:ドル/バレル)
WTI原油(期近)日足
出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「クッシング地区の原油在庫率は再び上昇し始めた」

今回は「クッシング地区の原油在庫率は再び上昇し始めた」として、原油の在庫率のデータに注目します。

米国の原油在庫率は、EIA(米エネルギー省)が毎週公表しています。

週間石油統計内の原油在庫のデータと、稼働中の在庫収容量(キャパシティ)などから、在庫率が計算されています。

厳密には、原油在庫の量から輸送中の原油の量を引いた製油所やタンクに貯蔵されている正味の原油在庫の量を、在庫収容量で除した値を在庫率としています。

以下のグラフの通り、WTI原油価格がマイナス価格をつけた2020年4月20日(月)前後、WTI原油の主要な集積地であるオクラホマ州クッシング地区の在庫率は、80%前後と非常に高い水準でした。

これが、これ以上在庫を保管する場所がないため、4月21日の納会日に原油の現物を受けることができない、だから先物市場でもともと持っていた買い建玉を売って決済する他ない、という動きが生じる原因となり、売り注文が増え、その注文によって当該限月の5月限(のみ)がマイナスになった、と考えられます。

クッシング地区の在庫率は、5月1日の83%をピークに低下しはじめ、6月26日には57%まで下がりました。しかし、7月に入り徐々に上昇してきています。7月17日時点で63%です。

また、クッシング地区の原油在庫率が低下した5月と6月、逆に在庫率が上昇した地区がありました。

クッシング地区があるオクラホマ州の南側に隣接する、米国で最も在庫量が多いPADD(5つの石油管理地区)の一つ、メキシコ湾岸地区の在庫率が上昇しました。

クッシング地区の在庫をメキシコ湾岸地区に移動させた可能性があります。

原油在庫率のデータはクッシング地区が最も注目されるわけですが、それと同じくらい、メキシコ湾岸地区のデータも、注目する必要があると、筆者は考えています。

図:米国全体、クッシング地区、メキシコ湾岸地区の原油在庫率
WTIマイナス価格発生
出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。