OPECプラス減産順守のニュースは、冷静に判断しなければならない

著者:吉田 哲
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原油反発。主要株価指数の反発などで。39.99ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,861.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年01月限は12,390元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年11月限は261.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1028.75ドル(前日比3.35ドル拡大)、円建てで3,442円(前日比7円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月24日 20時5分頃 先限)
6,289円/g 白金 2,847円/g
ゴム 182.2円/kg とうもろこし 23,740円/t

●WTI原油 日足 (単位:ドル/バレル)
WTI原油日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡより

●本日のグラフ「OPECプラス減産順守のニュースは、冷静に判断しなければならない」

前回は「古くて残念な常識“OPEC減産で原油価格上昇”」として、OPECの減産と原油価格について、考えました。

今回は「OPECプラス減産順守のニュースは、冷静に判断しなければならない」として、5月から8月までのOPECプラスの減産の順守状況について、考えます。

減産順守率を公表するのは、JMMC(共同閣僚監視委員会)というOPECプラスの配下組織です。

この組織を構成するのは、OPECプラス内のOPEC側のリーダー格であるサウジ、そして非OPEC側のリーダー格であるロシアなどです。JMMCは、実質的に総会のような会議体です。

JMMCの役割は、総会に決議事項を勧告したり(決定権はない)、同じ配下組織の一つであるJTC(共同技術委員会)が集計したデータを分析し、減産順守率を計算・公表したりします。

9月21日(月)にJMMCが公表した8月のOPECプラス全体の減産順守率は、102%でした。100%以上が減産順守であるため、8月は、OPECプラス全体で減産順守だったわけです。

減産順守と聞くと、OPECの原油生産量は大きく減少している印象を受けます。特に、今年5月に再開したOPECプラスの協調減産は史上最大規模であるため、なおさらです。

ただ、この点については、留意点があります。段階的に、削減目標が緩くなる点です。緩くなるというのは、削減しなければならない量が、段階的に小さくなり、減産をする産油国の負担が小さくなっていく、という意味です。

(4月に合意した内容によれば、現在の減産は、途中でルールの見直しはあるものの、2022年4月まで継続することとなっています)

以下の表のとおり、削減目標は、5月から7月まで、日量970万バレルでした。これは、OPECプラスの23カ国から、リビア、ベネズエラ、イランの3カ国の減産免除国を除いた20カ国で、970万バレルを削減する、という意味です。

8月の削減目標は、日量770万バレルです。減産再開後の3カ月間は日量970万バレルを削減しなければならなかったものの、8月は(合意内容では今年12月まで)日量770万バレルを削減すればよかったわけです。

つまり、8月は、5月から7月までよりも、日量200万バレルも、減産が緩くなったのです。

減産順守率102%は、確かに減産順守なのですが、削減量は日量785万バレルであり、減産非順守だった前月7月の日量941万バレルよりも少ないことがわかります。

削減量が少なくなって、減産順守を達成できたことは、目標が緩くなったこと以外に、理由はありません。

OPECプラスは減産順守を達成した、というニュースの見出しをそのまま受け止め、OPECプラスの原油生産量が大きく減少している、と早合点してはいけない、ということです。

図:2020年5月以降のOPECプラス全体の減産順守状況
2020年5月以降のOPECプラス全体の減産順守状況

出所:OPECのデータより筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。