米国の2020年の大統領を決める選挙戦は、大混乱

著者:吉田 哲
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原油反発。主要株価指数の反発などで。37.64ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1,897.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)、國慶節のため休場(10月1日から8日)

上海原油(上海国際能源取引中心)、國慶節のため休場(10月1日から8日)

金・プラチナの価格差、ドル建てで1012.95ドル(前日比7.6ドル縮小)、円建てで3,444円(前日比13円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月5日 大引け時点 先限)
6,431円/g 白金 2,987円/g
ゴム 187.0円/kg とうもろこし 24,030円/t

●NY原油先物 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「米国の2020年の大統領を決める選挙戦は、大混乱」

前回は「今どきの金相場は、少なくとも5つのテーマで見つめることが必要④」として、過去3回に続き、先々週発生した金相場の急落の背景について考えました。

今回は「米国の2020年の大統領を決める選挙戦は、大混乱」として、米大統領選挙をめぐる混乱と金および原油価格の動向について、考えます。

日本時間2020年10月2日(金)14時前、一つのツイッターのアカウントから衝撃的なツイートが世界に発信されました。自身の新型コロナ感染を明らかにした、トランプ大統領のツイートです。ツイート直後、リツイートの件数は、数秒おきに、数千から数万件、瞬く間に増加していきました。

報道機関各社は、このツイートから数分とかからずに“速報”“号外”などでこの内容を伝えました。この内容を受け、アジア市場、その時動いていた欧米の主要株価指数やコモディティの先物市場は、一時的に“リスクオフ”のムードが強まりました。

次期大統領を決定するための選挙戦は、これまで、混乱の一途をたどっていました。新型コロナウイルスの感染拡大により、春から夏場前にかけて、各州で行われた予備選挙などの関連するスケジュールが相次いで変更されました。11月3日(火)が選挙当日ですが、一部報道では郵送での投票が検討され、この日に結果が出ない可能性があると、しています。

また、先週行われた1回目のテレビ討論は、“カオス(混沌とした状況)”と揶揄されました。強い言葉を相手の発言中にかぶせる、相手の目を見ない、など、政策や重要なテーマについて自身の方針を明らかにしながら討論するテレビ討論としては、まさにカオス(というよりも“泥仕合”)、だったと言えると思います。

選挙関連のさまざまなイベントのスケジュールが不安定化し、そして討論会が体を成さず、残り2回の討論会も不安視されていた中、一人の候補者の新型コロナ感染が発覚し、スケジュールにも、今後の討論会にも、さらに強い不安が生じました。残り約1カ月間となった選挙戦は、どのような展開となり、選挙はどのような結末を迎えるのでしょうか。

討論会のみならず、選挙戦そのものが“カオス”と言える、史上稀にみる大統領選挙の選挙戦にあって、金も原油も、強い特色を出しながら、価格が推移ました。以下は、トランプ氏の感染を知らせるツイートがあった、10月2日(金)と、その前日の1日(木)の、各種主要銘柄の騰落率です。

株価指数、通貨、コモディティ(商品)、暗号資産の4つのジャンルの合計24銘柄の騰落率を横断的にみると、ドルを除き、幅広い銘柄が下落したことがわかります。おおむね、投資家がリスクを回避するためにリスク資産から資金を引き上げる“リスクオフ”だったと、言えます。(金も売られました)

“ドルのみ高く、ほとんどその他が安い”事象は、2月から3月に発生した、新型コロナショックで起きました。短期間ではあるものの、それくらい、投資家のリスクを回避する姿勢が強かった、つまり、それくらい、トランプ大統領のコロナ感染のニュースが、マイナスの意味で、インパクトが強かったのだと、考えられます。

図:2020年10月1日(木)と2日(金)の、各種主要銘柄の騰落率


出所:楽天証券のマーケットスピードⅡなどのデータより筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。