米国の大規模な金融緩和が、長期的に金と原油相場を支える

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。主要株価指数の反発などで。39.66ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反落などで。1,918.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)、國慶節のため休場(10月1日から8日)

上海原油(上海国際能源取引中心)、國慶節のため休場(10月1日から8日)

金・プラチナの価格差、ドル建てで1026.85ドル(前日比11.45ドル拡大)、円建てで3,496円(前日比51円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月6日 19時38分頃 先限)
6,500円/g 白金 3,004円/g
ゴム 190.0円/kg とうもろこし 24,100円/t

●NY原油先物 日足 (単位:ドル/バレル)
NY金先物日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「米国の大規模な金融緩和が、長期的に金と原油相場を支える」

前回は「米国の2020年の大統領を決める選挙戦は、大混乱」として、先週までに発生した米大統領選挙をめぐる混乱について、考えました。

今回は「米国の大規模な金融緩和が、長期的に金と原油相場を支える」として、米国の大規模な金融緩和が、金と原油相場に与える影響について、考えます。

金も原油も、ツイート直後の相場の環境と値動きが示したとおり、同時に複数の材料が作用しており、相殺され、価格が決まっていると、考えられます。仮に、上昇要因しかない場合は、価格は一方的に上昇していると考えられます。(逆もしかりです)

上昇・下落両方の材料が絶えず存在している、という点で言えば、今後の価格動向は、それらのバランスによって、上昇したり下落したり、さまざまな状況になり得ると言えます。このことを前提にした、今後を考える上でのポイントは、“どの材料が、インパクトが最も強いか”だと思います。

長期的には、実は、すでに非常にインパクトが強い材料は、既に存在していると、筆者は考えています。それは、“米国の大規模な金融緩和”です。短期的には、あまり目立つことはないかもしれませんが、長期的には、金にも原油にも、上昇圧力を与えていると、みられます。その仕組みは、下図のとおりです。これに従えば、大規模な金融緩和策は、“株高・金高・原油高”の要因です。

新型コロナ感染拡大によって負ったダメージを回復させるべく、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)は、大規模な金融緩和を行っています。すでに彼らは、金融緩和策の一つであり、社会に資金を供給する策である資産の買い入れを、当面継続すること、そして、同じく金融緩和策の一つで、個人や企業の資金調達を行いやすくする低金利策を、数年先まで実施することを明言しています。

基本的に、FRBなどの中央銀行は、その国の政府と、独立的な立場をとるとされているため、その国のトップが誰であったとしても、中央銀行は“物価や雇用の安定化を図る”という本来の役割をまっとうすることになっています。

その意味では、今回の米大統領選挙の選挙戦がどのような状況だったとしても、次期大統領が誰だったとしても、コロナが経済に引き続きダメージを与えたり、経済が回復したとしてもコロナ前(ビフォーコロナ)の状況に戻らない状況が続いたりした場合、中央銀行は本来の役割にのっとり、彼らの判断で、粛々と金融緩和を続けるとみられます。

今後、金においては実態を伴った株高が下落要因になり得、原油においては、米国を含む主要な先進国でクリーンエネルギーへの転換の模索が加速している点が、需要減少という側面から、下落要因になり得ます。

金も原油も、個別に、下落要因となり得る材料を抱えているわけですが、このような下落要因を、相殺し得るのが、米国の大規模な金融緩和なのだと、考えます。

リーマンショック後、米国の大規模な金融緩和が、数年間、“株高・金高・原油高”を演出しました。現在、その時を大きく超える規模の金融緩和が行われていること、コロナが向こう短期間終息しない可能性が高いことを考えれば、比較的強い下落要因にさらされたとしても、下落の規模は一定程度に収まり(下落幅は比較的浅く、期間も比較的短い)、金融緩和によってむしろ、底堅く、推移すると、現段階では考えています。

図:金融緩和と金と原油の関係
金融緩和と金と原油の関係

出所:筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。